バレリーナの美しさを支えるものとは? 「体型を気にしすぎて踊りどころではなくなる子もいます」
近年では、個性に基づいた美も認められるように
クララ ただ最近、オーロラさんのように海外で活躍していた先生たちの間で、見た目に関して言うのをやめようという声が増えてきているんです。先生たちにも拒食や過食を繰り返してしまった辛い経験があるから。 そして海外には大柄なダンサーも多く、個性や柔軟性の中にある強さなどが美しいとされるようになってきて、価値観が変わりだしていると感じます。 オーロラ そうですね。私はまだ小さな子どもの講師しかしていませんが、今後生徒たちが間違った食事制限などせず、正しい知識をつけられるように尽力したいと思っています。 ── バレエ界の中でも新しい概念といいますか、美しさの幅が広がっているんですね。 クララ 今は、海外に進出したダンサーの様子もSNSを通して見られるわけですが、彼女らは単にガリガリなのではなくちゃんと筋力もある。そうした美しい細さを若い子たちが目にする機会が増えていると思います。 ジゼル SNSがいい方向に動いてる例ですよね。
子どもの頃から一筋に続けても、プロの道は険しい
── オーロラさんはロシアでプロとして活動されていたと伺いました。 オーロラ はい。でも、すんなり入団が決まったわけではなく、一度は帰国して苦しい時期を過ごしました。 クララ その後、どうやって入団したんですか。 オーロラ それまでの私は、あまり意地もこだわりもないのんびりしたタイプだったんですが、入団が決まらない時に初めて「ここまで頑張って1回もバレエダンサーにならないで終わることはできない。絶対に逃げない」って自分で思えたんです。 ロシアにはバレエ団がたくさんあるから、ひとつくらい入れてくれるところはあるだろうと電話やメールをしまくり、気付いたことがありました。 やっぱり上手さも重要ですが、バレエ団がその時に必要としている体型の人が受かるんですよね。
── やはり決め手はサイズなのですね。 オーロラ はい。バレエ団によっては170cm以上の女性しか入れないところもあれば、今は150cmの人が欲しいというところもあるんです。だから断られても折れずに門を叩き続けて、ひとつのバレエ団に所属することができました。 ただ、なかなか入団が決まらなかったので、ワガノアメソッド(ロシアバレエの教授法)を学び、バレエの先生の資格を取るための大学受験をしていたので、結果としてバレエ団員と大学生の二足の草鞋を履くことになり、とても忙しい毎日でした。 クララ すごく頑張り屋さんなんですね! でも今、ロシアは戦争で大変でしょう。その関係で帰国されたんですか? オーロラ 実はコロナが流行り始めた頃に移籍を考えていて、ウクライナのバレエ団を受けに行っていたんです。その間にロシアが国交を閉鎖して戻れなくなってしまい、日本へ帰国するしかなかったという事情があります。 ── それは大変でしたね。今は無事に日本でダンサーと講師のお仕事をされているとのことで、何よりです。
写真/グレイ・ジェームズ(ジゼル、クララ)、玉井 美世子(オーロラ) 取材・文/木村千鶴