水道管理、AIで省力化 メーカー、自治体で取り組み進む
能登半島地震で断水が長期化する原因となった、水道の耐震化の遅れ、老朽化は全国的な課題だ。水道管メーカーなどは人工知能(AI)を使って老朽度合いを測ったり、断水の恐れのある地域を特定したりする技術を開発。財政難や人手不足に悩む地方の自治体でもテクノロジーを駆使し、漏水や破損を予防する取り組みを進めている。 鉄製水道管の国内シェアの半分を占めるクボタ(大阪市)は、センサーやAIを利用して上下水道のインフラを維持管理するサービスを手掛ける。地下の水道管のデータ、事故の履歴などをもとに管路の老朽度を自動で算出。さらに地盤情報、過去の地震の被害情報などから、災害が起きた場合の被害を予測する。 財政が豊かでない中小規模の自治体が、断水の被害が大きくなりそうな水道管路を優先的に修繕できるようにしてコスト削減につなげられる。同社の主要サービスは、今年8月時点で全国で約300の地方自治体や民間事業者が導入している。10月には新たに、断水戸数を予測できる機能を開発していると発表した。 自治体側も積極的に対策に取り組む。福岡市は今月、水道管に設置したセンサーで検知した音をAIが水漏れかどうか判別する新システムを導入した。茨城県は人工衛星による地表面の観測データ、水道使用量などの情報をAIが分析し、漏水が起こるリスクが高い地域を特定、予防につなげる実験を続けている。 国内では主に高度経済成長期に整備された水道の設備の老朽化が進み、近年は年間で2万件を超える漏水や破損の事故が発生。耐用年数を超えた水道管路の割合は年々上昇し、2021年度に22・1%にのぼる。水道事業は主に市町村単位で行われ、職員数も少なく、省力化は必須となっている。(織田淳嗣)