続く「腸内環境改善」大ブーム!100年前から大人気のヨーグルトが日本人の定番の健康食になるまで
カスピ海ヨーグルトから「発酵」へ
2000年代に入って最初に流行したのが、「カスピ海ヨーグルト」。名前はなんとなく少しあやしかったが、長寿の研究で知られる京都大学名誉教授、家森幸男が旧ソ連時代にジョージアから栄養分析のため持ち帰り、紹介したのがはじまりで、フジッコが製品化した。多くのヨーグルトではブルガリア菌、サーモフィラス菌、ビフィズス菌が種菌なのに対し、クレモリスFC株から作られ、粘りがあるのが特徴。この粘りが免疫力を活性化させると、注目を浴びた。 また、2000年にはピロリ菌を抑制する効果があるとされる乳酸菌を用いた「明治プロビオヨーグルトLG 21」が発売されている。このふたつが菌株の能力に着目し、ヒットしたヨーグルト第1号である。 05年前後から、「植物性乳酸菌」がにわかにスポットライトを浴びた。野菜や豆など植物を餌に増殖する乳酸菌で、これで発酵させるのが漬物や味噌だ。
日本人の体質に合い、塩分や酸分の多い過酷な環境ですくすく育つため生きて腸まで届く力が強く、免疫力アップ効果が高いとうたわれた。続いて、11年の「塩麹」にはじまる伝統的発酵食品の再評価も、腸ブームにつらなる現象だった。
インフルエンザ予防として冬の定番に
同じ頃、「機能性ヨーグルト」の大ブームが起こり、現在も進行中だ。きっかけは、「明治ヨーグルトR-1(現「明治プロビオヨーグルトR-1」)」、雪印メグミルク「恵 Megumi 長くとどまるガセリ菌ヨーグルト」「恵 Megumi 生きて届けるビフィズス菌ヨーグルト」、「森永ビヒダスヨーグルトBB536」など、菌種名や菌株名を打ち出した製品を各社が続々発売したことだった。なかでも、使用される乳酸菌1073KR-1が「免疫力を高めてインフルエンザを予防する」とテレビで報道された12年から、R-1は冬に品薄が続くモンスター商品になった。 10年からトクホ取得のヨーグルトが現れ、15年からは機能性表示食品のヨーグルトも急増。スーパーのヨーグルトコーナーに並ぶカップ入りヨーグルト、飲むヨーグルトの種類には圧倒されるばかりだ。表示する機能性もおなか関連ばかりでなく、「記憶力を維持する」「目と鼻の不快感を緩和する」「血管のしなやかさ維持に役立つ」「尿酸値の上昇を抑える」「歯と歯ぐきの健康が気になる方に」「口内フローラを良好に」「紫外線から肌を守る」「睡眠の質向上」……と百花繚乱だ。 ヨーグルトが不老長寿食としてはじめて話題騒然になったのは、大正時代のはじめ。日本初の瓶入りヨーグルトと乳酸菌飲料「醍醐素」が発売されたのは1917年(大正6年)のことである。醍醐素はカルピスの前身で、キャッチコピーは「千古の強壮料」だった。100年前の日本人がヨーグルトに抱いた夢を、いま私たちも追っているのである。
畑中三応子