2リスダウンの中での試行錯誤のサイドスリップ。渾身の追い上げで7位のau TOM’S山下健太「今年一番のレース」/スーパーGT第4戦富士決勝
富士スピードウェイで行われた2024スーパーGT第4戦決勝。GT500クラスでランキング首位を快走する36号車au TOM’S GR Supraは、燃料リストリクター制限が2段階目に突入するサクセスウエイト74kgを背負ってのレースとなった。予選では予想された通りの厳しいパフォーマンスで14番手となったが、今季の36号車auの戦いぶりを象徴するように、レースではしぶとく順位を上げて行き、7位フィニッシュ。貴重な4ポイントを獲得するとともに、後半スティントの山下健太の活躍が光った。 【動画】2024スーパーGT第4戦富士 決勝日ダイジェスト 現在のGT500クラスでは、サクセスウェイトが50kgを超えた場合、搭載するウェイトの一部を、燃料流量リストリクター(燃リス)を段階的に絞ってエンジン出力を抑える形で置き換えることで調整が行われるが、今回の燃リス制限対象は36号車(2リスダウン)と3号車Niterra MOTUL Z(1リスダウン)で、ほとんどの車両が制限前の段階でウェイトも比較的軽いという状況。燃リスが絞られると、単純にガソリン供給量が減ってしまうため、エンジンの出力が抑えられてしまう。 その影響もあって、予選は14番手に沈んだ36号車ではあったものの、持ち前の決勝ペースの良さを活かして前半担当の坪井翔が周回を重ね、40周目に山下へバトンタッチ。2リスダウンでストレート勝負では圧倒的に不利な状況のなか、果敢に前のマシンの攻略にかかっていき、レース終盤に3台をオーバーテイクして7位入賞を果たした。 「2リスダウンではありましたけど、今年乗ってきた36号車のなかでは、かなり良かったです」と山下。 「今回は350kmレースで前半も後半も少しスティントは長めだったので、タイヤはかなり労っていました。早めにピットインするクルマが多かったなかで、坪井選手が引っ張ってくれたので、周りよりも自分は良い状態で走れたのが良かったのかなと思いますし、労る走りができたことが最後に3台くらい抜けた要因だったのかなと思います」と自身のスティントを振り返った。 レース終盤での勝負になることを想定していた山下。「アウトラップだけは16号車が真後ろにきていたので、ブロックするために(タイヤを)少し使ってしまいましたけど、ちょっと離せてからはセーブしながら走って、うまくできたのかなと思います」と、しっかりとタイヤマネジメントを意識していたという。 その中で注目を集めたのが、残り20周を切ったあたりから始まった24号車を駆る名取鉄平とのバトル。コーナーでの速さを活かして前に出るものの、約1.5kmのメインストレートでは2リスダウンの影響が出て、ストレートエンドで逆転を許すという展開が何周も続いた。 「24号車は元々ストレートが速かったのに加えて、僕たちは2リスダウンなので……」と語る山下だが、あの手この手を使って必死に食らいついた。 「最近のスーパーGTは空力がすごいので、サイドスリップ(マシン同士が高速走行中に横に並ぶと引き寄せ合う力)が効きます。それをうまく使えるとリス制限の差を消せるくらい効くので『それをどうやってうまく使うか?』というのを何周もやっていました」と、メインストレートでは何とか24号車の隣についてサイドスリップでスピードを上げようと試みている姿が公式映像でも捉えられていた。 ⚫︎苦しいレースが続いていた山下健太。2週間前の悔しさを晴らす「今年1番のレースができた」 何度も抜かれてはトライを繰り返して60周目の13コーナーで抜き切り9番手に浮上。そのままの勢いで、残り5周のところで19号車WedsSport ADVAN GR Supraを追い抜くと、ファイナルラップには17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTに接近し、パナソニック オートモーティブコーナーを立ち上がったところで並びかけた。17号車が最後はガス欠症状に見舞われたこともあり、チェッカー直前で逆転を果たして7位でフィニッシュ。 「たぶん、向こうも燃料がカツカツだったのかなと思います。こっちも速かったから、プレッシャーをかけられたのかなと。そこも良かったかなと思います」と、レースを終えた山下は全てを出し切ったという清々しい表情をみせた。 この走りをピットで見守っていた36号車担当の吉武聡エンジニアも「(2リスダウンで)ドライバー的にはフラストレーションを感じていたと思います。みんなのタイヤがタレてきたところでしか抜くチャンスが出てこないので、そこは戦略的に上手くやってくれたのではないかなと思います。今回のレースで思った以上にポイントを獲得できました」とレースを振り返る。2リスダウンという苦しい状況で掴み取った予想以上の結果に、36号車ピットは達成感に満ち溢れていた。 決勝日の前日である8月3日に29歳の誕生日を迎えた山下。当日はチームからサプライズでお祝いしてもらうなど、彼自身も笑顔が多い週末だった。しかし、同じ富士スピードウェイで2週間前に行われたスーパーフォーミュラ第4戦では、テストでの好調さとは裏腹に今季ワーストの13位に終わり、かなり落胆した表情をみせていた。 「本当にたまたまなんですけど、争っていた相手が(SFで所属している)KONDO RACINGだったので……2週間前のレースが頭によぎってきました」と山下。あの時の悔しさが終盤でみせた粘り強い追い上げの原動力になっていたことは間違いないだろう。 さらに今季はスーパーGTで36号車の一員として安定した活躍は見せているものの、本人としてはどこか引っかかる気持ちがあったという。 「振り返ると『今年、自分自身で良いレースができていないな』と思って……36号車として結果は残っていて、僕自身も無難に仕事はしてきましたけど、何か目立つような活躍はできていませんでした。今回はクルマとチームの力を借りて、久しぶりに楽しかったです。スッキリしました!」と山下。 「自分的にはSFとか他のカテゴリーを含めて今年のなかでベストレースができたと思います。ここから流れに乗っていきたいです。こういう流れも意外と大切なので、SFを含めて他のカテゴリーにも繋げられたらなと思います」と語りつつも、「こういうレースを毎回できれば良いと思う一方で……そんなに甘くはないというのがレースだと改めて感じています。引き続き、がんばります」と、後半戦に向けて気を引き締めていたのが印象的だった。 手に汗握る超絶バトル💥燃リス絞られながらもヤマケンが攻める!リアライズ名取鉄平も一歩も引かない!最高すぎる🙌#SUPERGT 2024第4戦 #富士スピードウェイ🔽ご視聴/ご購入は🔽https://t.co/meaNrSQOtl#スーパーGT #SUPERGT30th #富士GT350km pic.twitter.com/I2QH5dLL0X— J SPORTS❤️モータースポーツ🏁 (@jsports_motor) August 4, 2024 [オートスポーツweb 2024年08月11日]