「全身血だらけ、必死に逃げた」 原爆孤児だった母の心の傷、語り継ぐ息子 #戦争の記憶
■受け継ぐ「ヒロシマの羅針盤」
杉浦さんは現役アナウンサー時代、被爆者の体験手記を朗読する広島放送局の番組「ヒバクシャからの手紙」を6年間担当した。「誰一人として同じ体験はないと知った」。もちろん、父親の体験も。幼い頃に聞いた証言を再度聞き取り、原稿にまとめた。 父親の体験を伝承する身だが、杉浦さんはこれまで出会ってきた数多くの被爆者の切なる願いも受け止めている。「平和の願いを受け継いで、とバトンを渡された」のだと。「どの人間の命も、格差はなく重い。被爆者が示してきた『ヒロシマの羅針盤』を子どもたちに伝えたい」 ヒロシマの羅針盤―。私たちが受け継ぎ、しっかりと手に持って、核なき未来を指す道しるべとして歩を進めなければならない。
■取材を終えて
中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター・新山京子 被爆者にとっての「あの日」と「あの日から」を共にしてきた家族として、紡ぐべき言葉と思いが必ずある―。谷口さんと杉浦さんが私の背中を押してくれた。 89歳の私の祖母も79年前、遺体が折り重なる焦土の広島で原爆死した父親を捜し歩いた。遺骨も見つかっていない。その体験を語り継ぐ決意を固め、7月から「家族伝承者」の研修を受け始めた。取材で出会ってきた被爆者と祖母の、平和への願い。記者として自分が書く記事で、さらに将来は家族伝承者としても伝え続けたい。 ※この記事は中国新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です