初潮を迎えた日から、父は何度もレイプし、母は傍観した…実父の性加害を顔出し実名で告発し続ける理由
■友人にも魔の手を伸ばした可能性もある 現在、父は海のそばで暮らしているらしく、それもたえさんの気がかりになっている。 「表向き、自分の子どもにだけしか手を出していないと言っています。が、一度、家に私の女友だちを泊めたことがあって……。その翌朝、父親は『あの子はぴくりとも動かずに寝ていた』などと言っていました。しかも彼女とはその日以来、連絡が取れなくなってしまい。もしかしたら、父は友だちを襲ったのかもしれません。もしそうだとしたら、謝っても謝り切れない……。そして今も水着姿の子どもたちを狙っているのではないかと、心配でたまらないのです」 一度Xで父の名や住所を曖昧につぶやいたことがあったので、それを読んだ誰かが彼の家に嫌がらせに行ったことがあったそう。性的異常者が住んでいることへの注意喚起もあったが、彼女は自分で父に制裁をくだそうとは思っていない。 たえさんや弟が受けた心の傷に対しての報いを父に受けさせるため、これ以上被害に泣く子どもを増やさないために、父を告訴しようと思い立つ。 ■立ちはだかる時効の壁に、民事でも戦えない しかし、ことはそう簡単には運ばない。 まずは時効の壁。18歳未満で性被害に遭った場合、不同意性交等致傷罪は18歳になってから20年、不同意性交等罪は15年、不同意わいせつ罪は12年で時効となる。一方、民法の規定では、子どものころに受けた性被害の場合、被害者が加害者を知ってから5年経つと時効によって裁判で加害者の責任を問うことができなくなる。また、不法行為から20年行使しないと、損害賠償請求権も消滅してしまうのだ。 被害に遭ってから時間が経てば経つほど、証拠の散逸などが起こるため、できるだけ早く警察などに相談すべき。しかし、幼い子どもにそんな判断ができるだろうか――。 「私の場合、とっくに時効がきていますから、民事でも父親を告訴することができません。繰り返しになりますが、どうして被害を受けた側がずっと苦しみ続け、加害者側は何の罰も受けないだなんて、こんなおかしな話はないです」とたえさんは憤りを隠せない。 ちなみにアメリカでは2022年に「子どもの性被害については、時効を適用しない」とする特別法が制定された。 しかし、日本では亀の歩みの如く、法改正が遅々として進まない。 そんな中、たえさんの活動をサポートし、法改正に向けて尽力する弁護士がいる。カルト宗教への裁判弁護などで知られる紀藤正樹さんだ。 紀藤さんは、たえさんを「ジャンヌ・ダルク」と呼ぶ。なぜなら、たえさんのような性虐待のケースがボトムアップし、その結果第二、第三のたえさんが声を挙げれば、時効撤廃などへの動きが加速する可能性が高いからだ。そのムーブメントが発端となって法が改正されるかもしれない。 (後編に続く) ---------- 東野 りか フリーランスライター・エディター ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。 ----------
フリーランスライター・エディター 東野 りか