ナスバと国交省、自動車アセスメントの新試験「新オフセット前面衝突試験」公開 衝突相手への加害性も測る「共存性能」導入
国土交通省とナスバ(自動車事故対策機構)は11月8日、国交省とナスバが実施している「自動車アセスメント」において2024年度からスタートした「新オフセット前面衝突試験」の様子を報道公開した。 【画像】オフセット前面衝突試験における新旧比較 「共存性能」という点を重視した新試験ではこれまでの固定した吸収材への衝突から、走行するクルマを模した移動する台車へ衝突するように変更、相手側のクルマへの加害性も点数化し、クルマの評価をする。 ■ 1200kgの台車へオフセット衝突する 衝突相手となる台車は、対向車を模したものとするため、現在、日本にある乗用車の平均的なものとし、乗員なども含めて1200kgとした。衝突場所は50%オフセットで、双方がクルマの半分だけ当たることを想定したものとなる。 当たる速度は、これまで64km/hで固定したものに衝突していたが、新試験では双方が50km/hで走行して衝突する。 相手側への攻撃性の評価ポイントは3つ。台車の減速度、台車に付けたアルミハニカムの変形量を3Dスキャンして測定したもの、さらに突き刺さりについて、を判定する。 加害性の評価は減点制で反映、もともとあったオフセット前面衝突試験の評価は加点するが、そこから最大5点を引くこととする。 さらに、今回の新試験では「自車乗員の保護性能」の評価部位を変更、運転席はこれまでの21項目から24項目に増やした。内訳は頭部で1項目増、胸部で1項目減、腹部および腰部が3項目増。運転席のダミーは新世代の衝突実験用ダミーであるTHOR(ソア)に変更した。なお、助手席の評価項目に変更はない。 ■ クラウンセダンで新オフセット前面衝突試験を実演 今回の試験公開は、日本自動車研究所(JARI)つくば研究所 衝突実験棟で行なわれた。試験に使うクルマは先日、新オフセット前面衝突試験のアセスメントを含んだアセスメント評価で「ファイブスター」を得たことが発表されたばかりのトヨタ「クラウンセダン」。 相手車は前面に緑色に着色したアルミハニカムを装備した台車で、測定装置などを搭載、これを試験場にある装置で50km/hまで加速させる。 クラウンセダンは自らの動力ではなく、試験場の床下にあるワイヤーで引っ張り、加速させて衝突させる。 報道公開の試験では試験に必須の温度管理は省略しているが、衝突自体は本番と同じ双方50km/hで50%オフセット衝突を行なう。ダミーを乗せ、測定装置が付いただけのクラウンセダンを報道陣の前で衝突させた。 すでに公開されている、定められた条件で行なわれたクラウンセダンの衝突試験映像と同様に衝突し、相手車となる台車も試験映像と同じ方向へと飛ばされた。 衝突直後はエアバックによる煙が出て、前面のパーツも多数飛び散っている。クラウンセダンはハイブリッド車のため、さらに電気関係の安全確認もされたが、問題なく近くに寄ることができた。 50km/h同士の衝突でフロントは大破しているが、ドアはそのまま開き、フロントガラスはヒビが入っているものの、飛散するまでに至っていない。 クラウンセダンのフロントバンパー裏のクロスメンバーと思われる部分がフロントの形状を守っており、相手車の台車のアルミハニカムの同じ高さの部分が大きくへこんでいる。アルミハニカムの変形量から点数を付ける。 ■ 「共存性能」を強調、安全なクルマの普及と開発を目指す 新試験の公開では、ナスバ理事長の中村晃一郎氏が「自分の車両と相対した相手の車両双方の安全を守る、共存制度を評価する試験となっている。これによって、なおいっそう安全なクルマの普及と開発、そしてさらにはクルマ社会の安全性の向上に寄与していくものと考えております」と語った。 また、新試験について説明した自動車アセスメント部長の諸川慎治氏は、自動車アセスメントについて「ユーザーに対して、より安全なクルマの選択を促すとともに、メーカーに対し、より安全なクルマの開発を促すと、そういった社会的な波及性を持った取り組み」と説明した。 そのうえで、今回の新試験は「正面衝突等の死亡事故が交通事故死の3割で、これらの死亡事故を減らしていく必要がある」という背景から変更になったとし、「自車だけではなくて相手車に与えるダメージを確認する試験」だとした。共存性能ということは重要なキーワードだと指摘した。
Car Watch,正田拓也