じつに「特異な生物」が投げかかる謎…「子を産んで、乳で育てる」のは、いつ始まったのか
長い長い進化の中で、私たちの祖先は、何を得て、何を失い、何と別れてきたのかーー 約46億年と言われる地球の歴史において、生命が誕生は、遅くとも約39億5000万年前と言われています。そして、最初の人類が登場するのは、約700万年前。長い地球の歴史から見れば、“ごく最近”です。 【画像】中生代「最恐の哺乳類」がやばい…臼歯で判明「恐竜を食いちぎっていた」 しかし、そのホモ・サピエンスも、突如として誕生したわけではありません。初期生命から現在へと連綿と続く進化の果てに、生まれたのです。私たち「ホモ・サピエンス」という一つの種に絞って、その歴史をたどってみたら、どのような道程が見えてくるでしょうか。そんな道のりを、【70の道標(みちしるべ)】に注目して紡いだ、壮大な物語が『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)です。 この『サピエンス前史』から、70の道標から、とくに注目したい「読みどころ」をご紹介していきましょう。今回は、哺乳類の誕生に関して、哺乳類と哺乳類以外の哺乳形類の線引きの目安とされるグループ「単孔類」について考察してみます。現生に残る単孔類の子孫は、水鳥のような口と,哺乳類でありながら卵を産むことで有名な「カモノハシ」です。この単孔類の進化上の意義を考えてみましょう。 *本記事は、『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
哺乳類と哺乳形類の線引きに立つ「単孔類」
哺乳形類を構成するグループの一つとして、「哺乳類」が登場したのは、ジュラ紀から白亜紀の“どこか”だ。化石記録の不完全性もあり、その誕生の時期は絞り込めていない。 耳の骨と下顎の骨が離れ、哺乳類が生まれた。ただし、初期の哺乳類の耳の骨と下顎の骨は完全には分かれておらず、「メッケル軟骨」という軟骨を介して、互いに接していた。いささかややこしいこの関係は、哺乳類と哺乳類以外の哺乳形類の線引きが難しいことを示唆している。そこで、哺乳形類の中でもあるグループ以降に“登場”したものたちが「哺乳類」と定義づけられている。 そのグループの名前は、「単孔類」。 哺乳類の歴史において、“ヒトに至る系譜”と最も早期に分かれたこのグループは、現在にまでその子孫を残すことに成功しているという”長寿のグループ”である。単孔類の現生種における代表は、カモノハシだ。そのほか、ハリモグラの仲間なども単孔類に属している(ハリモグラは、「モグラ」という名前ではあるけれども、モグラの属する「真無盲腸類(しんむもうちょうるい)」ではないので、注意が必要だ)。 現生種の生息地は、オーストラリア大陸やタスマニア島など。カモノハシは川や沼などの水圏に生息し、ハリモグラは森林に生息する。なお、「単孔類」という名称は、卵も糞も尿も、すべて一つの孔から出ることに由来する。
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