「健全な利己主義」の哲学と、それを受け入れるべき2つの理由
利己主義は一般的に評判が悪い。私たちは幼い頃からよく、自分のニーズを優先するのは冷淡で自己中心的だと教えられてきた。しかし、適切な方法でアプローチすれば、実は利己主義も有益にはたらくのだとしたらどうだろうか。 「健全な利己主義」とは、有害なナルシシズム(自己愛)に陥ることなく自己ケアを奨励する思考傾向のことだ。他人を無視したり傷つけたりしない、バランスの取れた方法で自分の幸福、成長、ニーズを優先することを意味する。 研究によると、健全な利己主義は以下の2つの理由から重要だ。 ■1. 自分の幸福を高める 2020年に学術誌Frontiers in Psychologyに掲載された研究論文によると、「病的利他主義」として知られる極端な無私無欲は、有害な結果をもたらすおそれがある。これは、他者を助けたいという欲求が過剰になったり、誤った方向に向かったりして、自己犠牲や他者への危害につながる場合に起こる。 「すべての利己主義が必ずしも悪いわけではなく、すべての利他主義が必ずしも良いわけではない」と研究者は説明する。 この種の利他主義は、不健全なレベルの自己犠牲、破壊的な行動の助長、あるいは善意から行ったことが逆に状況を悪化させるなどの結果をもたらしかねない。たとえば、研究対象者の中で病的利他主義の傾向が高い者の多くは、自分の絶え間ない援助に周囲の人々が圧倒されていると感じており、場合によっては他者に害となることもあると報告している。 2013年の研究では、研究者たちは次のように指摘されている。「対人レベルでは、過保護な『ヘリコプターペアレント』と化した父親が、わが子に正当な理由で悪い成績をつけた教師を訴えると脅したり、母親が息子を守ろうとするあまり予防接種を拒否したりする事例が挙げられる」 「病的な利他主義に陥る可能性のある性格は、繊細で過度に共感しやすい人から、普通の人、そして完全に自己陶酔的なナルシストまで、実にさまざまだ。これらの異なる性格の人々は、善意を持っているという共通点があるが、それが有害な形で現れる」と研究者たちは付け加えている。 度を越した無私無欲に走る人々の多くは、しばしば無意識のうちに承認欲求からそうした行動を取っており、それが自分の幸福を顧みないまま与え続けるサイクルを生む。これは通常、他人からの印象や感情をコントロールし、対人拒絶に直面することを避けようとする試みだ。