“しっぽ”は人間の成り立ちを解明する重要な鍵になる!
「しっぽ学」は理系・文系の垣根を取り払った自由闊達な研究
理系・文系の垣根を取り払った自由闊達な研究、それこそ東島さんが「しっぽ学」を提唱した当初から目指したものであった。 本書によると、ヒントは葛飾北斎の『富獄三十六景』。〈神奈川沖浪裏〉〈凱風快晴〉……、同じ富士山でも、場所により高さにより時期により、まるで異なって見える。でもどれもが富士山であり一つの視界のみが「真理」ではない。「しっぽ」という未知の領域を研究対象に据えた以上、ただ一つの分野にこだわっていては視野狭窄になる。それは東島さんにとっては自明だったのである。 「この本は、“しっぽ”についての雑学ではなく、“しっぽ学”を立ち上げた私という研究者が、何を考え、何に悩み、何に、なぜ情熱を燃やしたのかを、一般の方々にも知って欲しいという思いで書きました。研究者の裏事情って、ほぼ知られていませんから」 本書は東島さんにとって初の単著である。次に出版したい本は、どんなものなのか? 「そうですね、次に出す機会があれば、中学生くらいの少年少女向けに、やはり独立研究者の舞台裏を描いたような本を書いてみたいですね。人生のとば口で気持ちが揺れている彼らに、自由にやってと小さなエールを送りたい」 東島さんには、祖母から教えられたという座右の銘がある。 〈なせば成るなさねばならぬ何事も 成らぬは人のなさぬなりけり〉
足立倫行