現代版「富の象徴」タワマンに未来はあるか?「何か儲かりそう」憧れだけで飛びつく人が陥りがちな落とし穴
不動産市場で絶大な人気を誇る都心のタワーマンション。新築分譲価格は1億円超えもザラで、いまや現代版「富の象徴」とも言える状況だ。だが「何か儲かりそう」と安易に飛びつくと、大きな落とし穴が待っていることも。住まいとして、資産としてのタワマンに未来はあるか? 30年以上にわたり業界に身を置く不動産のプロが、タワマンの真実を読み解く。 【写真】不動産転売ヤーの間で狂騒が巻き起こった「晴海フラッグ」の豪華な内装 ※本稿は『家が買えない』(牧野知弘著、ハヤカワ新書)より一部抜粋・再編集したものです。 (牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー) ■ エリートサラリーマンは団地を買い求めた 本書では、団地は造成され始めた当時、庶民にとって「憧れ」の住居だったことを紹介している。この団地に近いところが、現代のタワマンにはある。昭和40年代に団地を買い求めたエリートサラリーマンの姿が、現代のパワーカップルなどが「富の象徴」としてタワマンを購入する姿と重なるのだ。 また、戦後の都市圏近郊における住宅ニーズの急増が団地を生み、近年の都心居住ニーズの高まりがタワマンを生んだという、それぞれの時代的な背景があるが、団地が並ぶニュータウンも、タワマンが乱立する湾岸エリアも、ともに社会的な要請に応じて人工造成された街である点に共通項がある。 もちろん、オールドタウン化する郊外ニュータウンに比べて、タワマンが立つエリアは現代の居住ニーズに応えるべく選ばれているため、今は活気がある。先ほどのマンションは立地次第という面でも、とりわけタワマンは価値が高いとされる。 だが、果たして今後もその人気は続くであろうか。
■ タワマン人気に懐疑的なワケとは? 私がその将来性に疑問を感じるのは、こうした街には「地歴」が存在しないからである。 地歴とは土地の歴史のことである。土地にもいろいろな背景があり、人々が繰り返し居住してきた土地もあれば、森や林、川べり、沼地などあまり居住に適さなかったところもある。 その土地がこれまでどのような姿であったかを知ることは、実は不動産を見るにあたってとても大切なポイントだ。 高度経済成長期から平成初期にかけて郊外で造成された新興住宅地には、かつて人々が住んだ地歴がなかった。もともと人が住んでいなかったのには、それ相応の地理的な理由があるはずだが、台地を切り崩して樹木を切り倒し、沼地を土砂で埋める、コンクリートで固める、など人為的な作業を加えたうえで、住宅地としてデビューさせたわけだ。 ■ ニュータウンは「ふるさと」と感じづらい 地歴のなかった土地に「人が住む」という新たなページが加えられた結果、「一代限り」の街としてその多くが衰退への道をたどっていることは、本書で述べている通りだ。 街としての持続可能性は、一代では結論が出ない。その地で育った子どもたちが、街に対してどれだけの愛着/プラウドを感じるかにかかっているからだ。残念なことに、そこで育ったはずの多くの子どもにとって、自分が大人になって「ふるさと」と感じることができるような存在になりえていないニュータウンが大半だ。 地歴があり、様々な年齢構成の人々が暮らす街で育つ場合とは異なり、彼らは同質性の高い住民が一斉に集住する街で育っている。街のごく一部、周囲にいる自分と同じような年齢、家族構成の人々としか関わってこなかったせいで、街自体には愛着が湧きにくい側面もある。 翻って、現代のタワマンエリアはどうであろうか。