現代版「富の象徴」タワマンに未来はあるか?「何か儲かりそう」憧れだけで飛びつく人が陥りがちな落とし穴
■ 「何か儲かりそう」大金を不動産に注ぎ込むニッポン 2024年3月、私は同年に開催されるパリ五輪の選手村を見学する機会があった。同地でも東京都同様に、選手村で活用した建物はマンションとして一般に分譲される予定だ。パリの場合はリニューアルなどはせずにそのまま売却されるようで、すでに販売が始まっていた。晴海に似た微妙な立地で、価格は市価より2、3割安いというのも同様だ。 だが、私が担当者に晴海の実情を告げたうえで、「パリではどうか」と聞くと、担当者は首をかしげて「そのような動きはまったくない、倍率も高くない」と言い切った。転売規制もサブリース規制も何もないのに、パリでは個人がマンションに投資して儲けようなどという動きはほとんどないのだと言う。 国民性の違いと言えばそれまでかもしれないが、パリでは古いアパルトマンに人気がある。それに対して、日本人は相も変わらぬ不動産神話を信じ、儲かりそうだと晴海フラッグに殺到している。 晴海フラッグに見られるような狂奔は、いったいいつまで続くのだろうか。フランス人ではないが、住宅は生活するための効用を得るものであって、金儲けの手段ではない。こうした浅ましい発想にいつまでしがみつくのだろうか。 金儲けのためとして自分のライフスタイルや価値観を真剣に顧みることもなく、将来に対する限りなく不確かな楽観を抱えて、「みんなが買っているから」「何か儲かりそうだから」という曖昧な理由で大金を不動産に注ぎ込む。そうした行為を続ける限り、住宅に対する真の愛着は育まれず、自分が住む街に誇りを持つことは到底できないであろう。
牧野 知弘