「日本人独特の気質が魅力に」タイ人有名インフルエンサーが、日本系コンテンツを配信するワケ
拡大を続けるインバウンド市場。韓国、中国に続いて勢いを伸ばしているのが、タイからの旅行者数だ。SNSを介した情報共有が、彼らの訪日インセンティブとなっている。では、いったいどんな要素がタイ人の心に「刺さる」のか? タイにおける日本系コンテンツの筆頭格であり、Youtube登録者数110万、再生回数4億超の「タイの日本好きなら誰でも知っている」と言われるインフルエンサー・びーむ先生に、活動のきっかけやタイ人にヒットする日本の魅力について聞いた。 ──びーむ先生は、タイで非常に有名な日本系インフルエンサーであり、ユーチューバーでもありますね。日本について発信しようと思ったきっかけは何でしょうか? びーむ 最初のきっかけは、日本の東京学芸大に交換留学生として訪日したことです。小さいときから日本の漫画『名探偵コナン』が大好きで、日本語に興味を持っていました。タイの大学では日本語を専攻し、より本格的に日本語を学びたいと思い訪日しました。 その際、時間があったので日本語の面白い表現などをネットに上げはじめました。 はじめは音声だけのシェアだったのですが、Youtubeをはじめると「もっと観たい」「楽しい」など大きな反響をいただくようになり、タイに帰ってからも発信を続けたところ、たくさんの人がフォローしてくれるようになりました。 タイでは生まれたときからニックネームで呼ばれます。私のニックネームは「ビーム」なんですが、気が付くとネット上で「びーむ先生」と呼ばれるようになり、それがそのまま私の活動名となりました。 ──タイ人であるびーむ先生にとって、日本のどんな部分が魅力的に映ったんでしょうか? びーむ 一番感銘を受けたのは、接客やコミュニケーションにおける丁寧さや親切さです。 タイは「ほほえみの国」と言われ、実際にニコニコしている人が多いです。優しい人も多く非常にフレンドリーなんですが、仕事や働き方が規則化されていない場面も多く、規則があったとしても重視されていないからか、従業員によってサービスなどに違いが出てしまうことがあります。 ですが日本の場合、たとえばレストランに入ると「すべての」従業員が丁寧かつ親切です。マニュアルもきちんとあって、サービスの中にも細かい気配りを感じます。 最初に日本を訪れたときに印象的だったのが、バスがバス停の前できちんと停まることでした。 さらには、ゴミ箱もないのに街をきれいにしようと全員が努力していること、仕事などでは従業員「全員」がマニュアルに沿って動くこと、あらゆる場面でルールを守ろうとする姿勢、一人一人の責任感が強くて最後まで自分の役割を全うしようとする気質など、日本人には当たり前のことが、私にとっては驚きでした。 私は外国人だから、日本のそういう部分を新鮮に感じ、「いいな」と思ったんです。それが、私が日本を好きになった理由です。 現在では日本とタイを行き来するなかで築いた関係性が自分のなかで大切になっていて、これからもどんどん日本について多くの人に知ってほしいという気持ちで活動を続けています。 ──日本のアニメや漫画はタイを含めた海外で非常に人気です。そういったコンテンツも訪日インセンティブになっていますか? びーむ はい、そうですね。私は現在『推しの子』の登場人物である「星野ルビー」のタイ語版声優を担当しているんですが、日本のアニメや漫画は以前よりずっと人気が高まっていると感じます。 十数年前まではそれらの作品が海賊版などの違法な手段でしか楽しめなかったのですが、現在はリアルタイムかつ正規の方法で楽しめるようになりました。私よりずっと若いタイ人を含め、より多くの人がどんどん日本のアニメや漫画に触れる機会が多くなっています。 アニメ・漫画以外でも、日本企業で働きたいという需要は高く、タイの公立学校には必ずといっていいほど日本語学科があります。総じて、タイ人の日本への関心は以前よりずっと高くなっていると感じます。 ──タイからのインバウンドは特に増えました。どのような要因が考えられますか? びーむ 以前は、LCCなどが現在ほど渡航していませんでした。ですが、今ではたくさんのLCCが出ています。 また、SNSが発達してより多くの人が日本の情報に触れる機会が増えました。さらに、円安により、日本での買い物や移動がしやすくなりました。それらの要素が複合的に重なっているのだと思います。