中国株の乱高下、21兆ドルの資金持つ個人投資家の逃避促す
(ブルームバーグ): 2億人に上る中国の個人投資家が、中国株式市場の好転を後押しするはずだった。ところがその個人投資家が逆に、市場の弱さの要因になってしまった。
中国人民銀行(中央銀行)が打ち出した景気刺激策によりCSI300指数が9月下旬の5営業日の取引で25%上昇したのを皮切りに、9兆7000億ドル(約1448兆円)規模の中国株式市場は超特急でブームと破裂を経験した。遅れて株式市場に参加した多くの小口投資家は、株価が急落した際に損失を被り、急いで撤退することを余儀なくされた。
CSI300指数が10月9日に2020年以降で最悪のパフォーマンスを記録したことを受け、ソーシャルメディアプラットフォーム「微信(ウィーチャット)」上には「証券口座を閉じる」というフレーズが5600万回も登場した。
銀行の指数によると、資金はすぐに株式取引口座から貯蓄口座へと戻った。個人投資家たちはソーシャルメディア上で損失を嘆き、プラットフォーム「小紅書」のユーザーの1人は「株式市場は私のような初心者には向いていない」と結論付けた。
210億ドルの預金残高を持つ中国の膨大な数の個人投資家層が長期的な株価上昇を後押ししてくれるだろうという強気派の期待は、センチメントの急激な変化によって裏切られた。
ソーシャルメディアにあおられた個人投資家は、その代わり気まぐれであることが証明され、株式市場に資本を素早く投入できるという長所を、価格変動を悪化させるという短所へと変えてしまった。
北京在住でテクノロジー業界勤務のシェルトン・ワン氏(32)は、熱狂に屈した多くの投資家の1人だ。株価が最初に急騰した後に「衝動的」に取引口座に資金を振り込んだが、1週間の連休明けに株価が急落したのを見て資金を引き揚げた。
「誰もがその話題で持ちきりだった。政策の見通しや中国株の割安さについての話だ。ソーシャルメディアでも至る所で話題になっていた」と同氏は振り返った。「市場の急落が私の頭を冷やしてくれたが、同時に休暇前に得た利益のすべても消失させた。よく考えてみると、経済や政府の市場活性化の決意について私は常にかなり悲観的だった」と語った。