能登半島地震「進まない水道管の耐震化」浮き彫り 持続可能な水道インフラどう作るか
2024年1月1日に発生した能登半島地震。約5カ月にわたって断水が起きるなど、水道インフラに甚大な被害をもたらした。その背景には、水道管の劣化や耐震化の不備があるが、なぜ水道インフラの整備が進まないのか。地震大国・日本で水を安定供給するには、どうしたらいいのか。AERA 2024年12月23日号より。 【イラスト】緊急点検の結果、上下水道の耐震化整備にばらつきが発覚 * * * 耐震化が進まない背景として、深刻な技術者不足がある。災害による水道被害に詳しい金沢大学の宮島昌克名誉教授は、実情をこう語る。 「阪神・淡路大震災の教訓で、高度経済成長期に整備された水道インフラの耐震化の重要性が強く認識され、大都市では対策が進んだが、地方では、人材不足が深刻な足かせとなっている」 宮島教授によれば、地方の水道事業体では、一人の職員が100キロメートル以上の水道管を担当するケースはよくあり、通常の業務でも手いっぱいの中で、耐震化事業の計画を立て、工事を発注・管理していくのは極めて困難なのだという。 技術者の高齢化も深刻な問題だ。高度経済成長期に整備を担った熟練技術者の多くが退職時期を迎えている。 水道管の状態を見極めたり、漏水を探知したりする技術は、長年の経験と勘所が必要だ。公務員の中でも、水道部門の職員は10年、20年の経験を持つベテラン職員も珍しくないと聞く。宮島教授は、 「そうした熟練技術者の多くが一斉に退職時期を迎えています。けれどもこの領域は、即席で人材を育てるのは難しい。技術の継承が間に合わない状況です」 と危機感を示す。 人材不足の解消には、官民連携の推進が一つの鍵となりそうだ。「耐震化事業を民間に委託し、計画から設計、工事まで一貫して任せる方法や、水道事業のOB人材の活用なども検討する必要があります」と宮島教授はいう。ただし、「補助金があっても自己負担が必要な現行の制度では、財政基盤の脆弱な地方自治体には対応が難しい。インフラ整備の財源確保と人材確保の両面から、抜本的な制度改革が必要です」と指摘する。 こうした課題に対し、デジタル化による解決を模索する動きも出てきている。その先進事例が、愛知県豊田市の取り組みだ。