能登半島地震「進まない水道管の耐震化」浮き彫り 持続可能な水道インフラどう作るか
これらの分散型システムは、災害時のリスク分散や環境負荷の低減、地域の自立性向上といった観点からも注目されている。 すでに「分散型システム」を取り入れている地域もある。石川県珠洲市で銭湯「海浜あみだ湯」を運営する新谷(しんや)健太さん(33)によれば、市内の一部地区では自前の浄水施設を持ち、下水も浄化槽で処理する分散型インフラを採用していた。そこではメインの水道断水の影響をほとんど受けなかったという。 「むしろ、周辺地域の料理や洗濯を引き受けて支援に回るなど、分散型システムの強みを示していた」(新谷さん) ただし、分散型システムへの移行には課題もある。国交省石井宏幸大臣官房参事官は、次のように指摘する。 「未来の水道インフラのモデルを考えた時、分散型システムは復旧が早く、災害に強い点にメリットがありそうです。ただし、コストや管理面での課題が残されており、地域ごとに最適な水道供給のあり方を考えていく必要がある」 そのため国交省は24年度の補正予算で、能登半島での小規模分散型システムの実証事業を計画。従来の集約型と分散型のベストミックスを探る試みが、被災地の復興と並行して進められようとしている。 石井参事官は能登半島地震から得た教訓について、実感を込めてこう話す。 「これまでは、コストカットで施設の集約化を進めてきましたが、今回、災害時の脆弱性や人口減少社会における維持管理の課題が浮き彫りになりました。これからは地域の実情に応じた柔軟な選択が必要です。長い目で見て、人口減少の社会の中で本当に相応しいシステムは何なのか。能登の地震が、見直しのきっかけを与えてくれたんじゃないかと感じています」 (ジャーナリスト・古川雅子) ※AERA 2024年12月23日号より抜粋
古川雅子