能登半島地震「進まない水道管の耐震化」浮き彫り 持続可能な水道インフラどう作るか
■人口密度低い山間部や離島、簡易水道や運搬給水も 豊田市では漏水調査などの効率化にAIなどを活用し、調査費用を10分の1に削減。この技術は全国約200の水道事業体に導入され、効果を上げている。 デジタル化の取り組みは、技術継承の面でも意外な成果を上げているという。豊田市上下水道局上下水企画課主幹の岡田俊樹さんは、こう話す。 「AIシステムを導入する過程で、ベテラン職員の持つ暗黙知を形式知に変える必要があり、それが若手との対話のきっかけとなりました。図面を見ながら昔の状況を説明したり、現場での判断基準を共有したり。デジタル化が技術継承の架け橋になっているんです」 一方で、デジタル化の限界も冷静に見据える必要がある。岡田さんは言う。 「課題解決の手段としてAIを導入しましたが、最終的には人が判断を下す必要があります。デジタル化で効率を上げながら、人の経験と知恵を生かす。そのバランスが重要だと考えています」 こうした動きを受け、国も新たな対策に乗り出した。 国交省は画一的な対応ではなく、地域の実情に応じた柔軟なアプローチを模索している。特に注目されるのが、2024年度の補正予算に盛り込まれた、「分散型水道システム」の実証事業だ。「分散型水道システム」とは、大規模な中央集中型の水道システムに対して、より小規模で地域に密着した水供給の形態を指すもの。具体的には、小規模水道施設(簡易水道など)、給水車やタンク車による運搬給水システム、そして建物や地区単位での小規模な水循環システムなどが含まれる。これらは地域の特性や需要に応じて柔軟に対応できる利点がある。 例えば、山間部や離島などの人口密度が低い地域では、大規模な水道インフラの整備が非効率な場合があり、そうした地域では簡易水道や運搬給水が有効だ。また、都市部においても、ビルや住宅団地単位で雨水利用や中水道システムを導入し、水資源の効率的な利用を図る事例が増えている。