なぜ北海道コンサドーレ札幌の全選手は年俸の一部返納を申し出たのか…背景にある47歳の野々村社長との絆
東京都や大阪府をはじめとする大都市圏の7都府県に対して緊急事態宣言が発令されるなど、世界中で猛威をふるい続ける新型コロナウイルス感染が日本においても新たなフェーズに突入したなかで、J1の北海道コンサドーレ札幌の選手たちが起こした行動が大きな注目を集めている。 新型コロナウイルス禍で大幅な収益減を余儀なくされるコンサドーレの力になりたいと、外国籍選手を含めた28人の全所属選手が4月から9月までの年俸の一部を返納することを決定。コンサドーレの野々村芳和代表取締役社長によれば、合計額は「1億円弱ぐらいになる」という。 室蘭大谷高から2008シーズンに加入した生え抜きで、2010シーズンから「10番」を背負い、2016シーズンからはキャプテンを務めるMF宮澤裕樹を中心とする選手一同はクラブを通じてこんなコメントを発表している。 「このような状況だからこそ、いつも以上に支え合わなければならないと感じています。新型コロナウイルスによるクラブへの影響も大きくなる現在の状況を鑑み、我々北海道コンサドーレ札幌の選手一同は、クラブに対して支援することを全選手合意のもと、決めました」 日本を上回る被害を受けているヨーロッパでは、ユベントス(イタリア)やFCバルセロナ(スペイン)、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)などが選手側からの発案で報酬をカットしている。 日本のプロスポーツ界では初めてとなる申し出がサッカーのコンサドーレで具現化した背景は、2013年3月から現職を務める、47歳の野々村社長の存在を抜きには語れない。 現役時代はミッドフィールダーとして活躍した野々村社長は、清水東高から慶應義塾大学をへて1995シーズンにジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)へ加入。岡田武史監督(当時)のラブコールを受けて2000シーズンにコンサドーレへ移籍し、J1への昇格に貢献した。 J1へ残留を果たした翌シーズン限りで引退した後は、サッカースクールの経営を中心として北海道サッカー界の活性化に奔走してきた。そして、コンサドーレが年間勝ち点や負け数、総失点などの歴代ワースト記録を軒並み更新し、最下位でJ2へ降格した2012シーズンのオフに転機が訪れる。