年末恒例マル激ライブ 日本版トランプ現象はいつどんな形で始まるか
今週のマル激は、12月21日に東京・蒲田「アプリコ」で行われた「年末恒例マル激ライブ」の模様をお送りする。 元日の能登半島地震から始まった2024年は、世界各国で行われた選挙では与党がことごとく大敗するなど激動の1年となった。実際、アメリカとイギリスでは政権が交代し、日本も10月に行われた総選挙で自公連立与党が大敗し、30年ぶりの少数与党政権となった。どうやら全世界的に政治が不安定化の様相を呈しているように見える。 2025年は特にアメリカでトランプ政権が再び誕生することで、アメリカのみならず世界の秩序が大きく変わる可能性がある。また、アメリカで起きたことは、ほぼ周回遅れで日本にも起きると言われてきたし、実際にそうなってもきた。 2016年の第一次トランプ政権の誕生から9年目となる日本にも、そろそろ大きな変化が起きそうな気配が感じられる。 しかし、その場合、日本版トランプ現象とはどのようなものになるのだろうか。政治的にはアメリカのように保守勢力が伸長するのか。または、政策や理念とは関係なく、SNSを使いこなした勢力が一世を風靡するのか。それは失われた30年から日本が脱する一助となり得るのか。 「失われた30年」の間、日本は経済成長も賃金上昇も実現できず、国力を低下させてきた。今や日本はあらゆる指標で先進国の最下位グループに転落している。経済成長ができず、産業構造を改革できず、既得権益を引き剥がすことができず、ひたすら人口減少と経済停滞に対して無策のまま無駄に過ごしてきた日本は、このまま没落国家の道を歩むことになるのか。はたまたどこかで国民が目を覚まし、回復の道を歩み始めるのか。その場合、どのようなモデルが考えられるのか。 戦後の日本は少なくとも1990年代までは、冷戦構造という日本にとってとても有利な国際条件の下で、人口ボーナスのメリットをフルに活用しながら、経済成長の果実を満遍なく享受してきた。日本経済のパイが大きくなる中、日本国民は大勢に従っていればそこそこの経済的恩恵を受けることができたし、実際に生活水準は確実に上がっていた。しかし、日本自体が成長できなくなっているにもかかわらず、大半の人々は高度成長時代に人為的に作られた考え方や制度を未だに従順に受け入れている。もはや沈みかけた船の中の座席争いに汲々としている場合ではないのではないか。 とはいえ、自分が信じる価値観を貫くことよりも周りの空気を読んで適応する方が得意なのが日本人の特性でもある。であるならば、日本をどう変えるかを考える前に、まずは個々人が自分たちの周りの家族や仲間や地域とつながり、それを少しずつでも変えていくことが重要だ。 今の日本では、本音で話ができる場所がどんどん失われている。空気を読み合い、本音を隠してキャラクターを演じ、そのキャラをSNSやLINEなどを通じて固定化していく。まずは身近なところで、本音で話せる場所づくりをしようではないか。 2024年最後となるマル激では、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が2024を総括し2025年を展望する公開番組をお送りする。 【プロフィール】 宮台 真司 (みやだい しんじ) 社会学者 1959年宮城県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。東京都立大学助教授、首都大学東京准教授、東京都立大学教授を経て2024年退官。専門は社会システム論。(博士論文は『権力の予期理論』。)著書に『日本の難点』、『14歳からの社会学』、『正義から享楽へ-映画は近代の幻を暴く-』、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』、共著に『民主主義が一度もなかった国・日本』など。 神保 哲生 (じんぼう てつお) ジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表 ・編集主幹 1961年東京都生まれ。87年コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。クリスチャン・サイエンス・モニター、AP通信など米国報道機関の記者を経て99年ニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を開局し代表に就任。著書に『地雷リポート』、『ツバル 地球温暖化に沈む国』、『PC遠隔操作事件』、訳書に『食の終焉』、『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』など。 【ビデオニュース・ドットコムについて】 ビデオニュース・ドットコムは真に公共的な報道のためには広告に依存しない経営基盤が不可欠との考えから、会員の皆様よりいただく視聴料(ベーシックプラン月額550円・スタンダードプラン1100円)によって運営されているニュース専門インターネット放送局です。 (本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)