中国の「和式トイレ」日本と“座る位置が違う”ナゼ。お尻が開いたズボンを穿く子も…中国の謎のトイレ事情
■ドアや仕切りがない「ニイハオトイレ」 ショッピングセンターのゴミ箱を便器に見立て、子どもを抱えておしっこをさせる親もいた。彼らは「子どもに我慢をさせてはいけない。出したいときはすぐ出す!」と信念を持っているかのようだった(おむつをしていないので、相対的に被害の少ないところを選んでいたのかもしれないが)。 子どもだけではない。若い女性も学校やデパートのトイレに入るときに鍵をかけないことがよくあった。うっかり開けると、目が合ったその人が便器に座ったまま「いるよ~」と答える。こっちは「見ればわかるわ」と気まずい気持ちになる。
そもそも中国のトイレにドアや仕切りが設置されたのは、比較的最近のことだ。田舎にいくと今でも、世界に名をとどろかせる便器が並んだだけの公共トイレ、通称「ニイハオトイレ」は普通にある。首都の北京にすら残っていた。 用を足しながらおしゃべりする風習はドアができてトイレが個室になってからも引き継がれ、デパートのトイレではそれぞれ個室に入った女性たちが、大声で喋っていた。 トイレと排泄をめぐる疑問はまだまだある。和式トイレの配置も、謎だった。
日本の和式トイレは個室のドアを横に見る方向に便器が配置されているのが普通だ。一方、中国の和式トイレは、しゃがんで用を足しているときに個室のドアが目の前に来る配置が多い。 個室に入って回れ右して便器をまたぐので、効率が悪い。なぜかトイレットペーパーホルダーと洗浄ボタンは奥の壁にあったりするので、しゃがんだまま体をひねって紙を引っ張らなければいけなかった。 ■謎の和式トイレの配置に対する仮説 「中国の和式トイレってなんで利用者の道線を考えていないんですかね」と、私より中国在住歴が長い日本人男性に言うと、彼は「それは……敵に後ろをとらせないためじゃないかな」と答えた。
トイレに長らくドアや仕切りがなかったのは、最も無防備になる瞬間に敵の来襲に備えるためで、ドアのあるトイレでも何らかの理由でドアが開いたときにすぐ対応できるように便器が配置されているのではないか。人に見られて平然としているのも、警戒心が羞恥心を上回るからではないかというのが中国生活十数年の彼が導き出した「仮説」だった。 たしかに、中国人にとってトイレが無防備になってしまう、できるだけ早く立ち去りたい場所であるなら、清潔感がないのも、鍵をかけないのもつじつまがあう。