寄付体験が発信され、善意の循環で寄付文化が広がる。公民連携による「メルカリ寄付」の挑戦
公民連携、寄付文化の発信が豊かな社会への一歩
――寄付活動を含めた、社会貢献活動をもっと広げていくためにはどんなことが必要でしょうか。 高橋:先ほどお話ししたこととも重なりますが、公民連携によって新たな可能性を生み出していくことがとても重要だと思っています。私がメルカリに転職したのも、公民連携を推進するために、民間側からも取り組んでいきたいと思ったからです。 公民連携を進める流れは段々と広がりつつありますが、行政と民間企業とでは考え方が異なり、私は「使っている言語が違う」とよく例えています。同じ物について話しているのに、使っている言語が違うので、なかなか一筋縄ではいかないんです。 公も民もどちらも経験をしていて、これらを通訳・仲介できる人材がこれからもっと重要になってくると思います。 もう1つポイントだと思うのが、企業側の理解です。社会貢献活動は一見利益につながらないようにみえるけれど、会社の価値を高める活動であり、回り回って会社の利益にもつながります。 そういった活動に対して、一定のリソースを割いたり、コストをかけたりすることの重要性を、経営陣はもちろん、社員も含めて理解することが重要ではないかと思います。 ただ一方で、こういった活動は企業側の負担になってしまうと継続をしていくのが難しいので、あくまで持続可能な仕組みをつくることが大事だと思っています。「メルカリ寄付」も「メルカリ」のアプリと、メルペイの仕組みを組み合わせた簡単な仕組みでできています。リソースやコストをかけたのに、すぐに終わってしまうと意味がないですから……。 ――寄付を気軽にできるような社会にするために、私たち一人一人ができることはどんなことでしょうか。 高橋:寄付を受ける側が、寄付をどう活かしたかを見える化できるといいと思っています。 ある団体さんにこれくらいの寄付が集まって、こんなことができたと見える化をすれば、達成感にもつながっていくと考えます。そういった情報発信を弊社なり、寄付先団体さんの方で行っていかなければいけないと思います。 ただそれだけですと、寄付をした一人一人はいつまで経っても傍観者のままなので、なぜ寄付をしたのか、寄付をしてどういう思いになったのかなど、寄付体験を発信してもらうことにも価値があると思っています。 メルカリの場合、売上金の一部による寄付が多いので、1円とか10円の少額な寄付もあるわけですが、「こんな少ない金額」とは決して捉えずに、寄付体験を発信、共有してほしいです。 そういう社会になれば、寄付へのハードルも自然と下がりますし、誰かが寄付をする際に背中を押すことにもつながっていくはずで、寄付がもっと気軽で当たり前になると、とても豊かな社会になっていくと思います。善意が循環していくことで寄付文化が醸成される社会を目指したいと思います。
編集後記
別媒体のインタビューで「メルカリで寄付文化の醸成がしたい」と高橋さんがお話しされていたのを見て、営利企業が取り組む理由が気になり、取材を申し込みました。 取材の中で印象的だったのは、寄付体験を発信していくことが寄付文化の醸成につながるというお話しでした。日本ではいいことをしても、それを言わないのが美徳のようになってしまっている印象があります。しかし、その感覚をアップデートしていくタイミングが、今まさに来ているのかもしれません。 寄付文化の醸成は、私たち一人一人にもかかっていることを再認識した取材となりました。
日本財団ジャーナル編集部