【婦人科医に聞くアフター更年期】多い悩みはGSM。オススメは骨盤底筋を鍛える運動。メンタル不調には、社会と接点を持つこと、体を動かすこと
通巻1600号を迎えた『婦人公論』。創刊以来、女性をとりまくさまざまな問題にスポットを当てて、自分らしく生きたいと願う読者に寄り添ってきました。その歴史はまさに《女性の生き方》の研究の積み重ねでもあります。そこで、この連載では、「女性の生き方研究所」として、読者のみなさんにアンケートを実施して、今を生きる女性たちの本音にせまっていきます。第1回のテーマは「アフター更年期」。たくさんお寄せいただいた回答をもとに、前・中・後篇の3回にわたってお届けします。今回は後篇。締めとなる今回は、回答者の声とともに婦人科の医師のインタビューもお届けします。 * * * * * * * ◆更年期をめぐる社会の変化 私が婦人科クリニックを開業したのは1992年、39歳のときです。その当時、社会的にはアフター更年期どころか、更年期女性のヘルスケアへの関心もまだまだ低かったですね。 そんななか、97年に「美しい50歳がふえると、日本は変わると思う。」というコピーとともに、銅版画家の山本容子さんやスタイリストの久米麗子さんなどが出演する資生堂のCMが流れたんですよ。 50代以上の女性に対しては「もう老人なんだから引っ込んでろ」というような時代でしたから、新鮮な衝撃でした。 同時に、80年代後半くらいから、ホルモン補充療法をはじめとする更年期治療の選択肢も、少しずつ紹介され始めました。 2005年に小林製薬が「命の母A」を広く販売し始めて、そのあたりから更年期の症状に対応した漢方薬や生薬、ハーブティー、サプリメントなども登場するように。私自身、まさにこの時代に更年期を過ごしながら、患者さんたちと向き合ってきました。
◆60代以降の一番の悩みはGSM そして今、開業当時から診ている患者さんたちが、アフター更年期世代になりました。 一番多い悩みは、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)といって、陰部がかゆい、においが気になる、痛くて自転車に乗れない、性交痛がある、尿漏れする、膀胱炎を繰り返すなどの症状です。女性ホルモンの減少により、外陰部や膣が乾燥して萎縮したり、炎症を起こしたりするんですね。 治療には、女性ホルモン入りのクリームを局部に塗る方法、レーザーを照射して膣粘膜を引き締める方法などがあります。 最近では男性ホルモン補充療法も出てきました。筋力維持や体力、気力向上に関わるホルモンを、膣や骨盤底筋などの局所的な治療に用いるものです。まだ日本産科婦人科学会のガイドラインには載っていませんが、今後は広まるのではないでしょうか。 ご自身で骨盤底筋を鍛える運動をするのも、尿トラブルをはじめGSMの改善に有効です。 私がおすすめするのは、トイレで便座に座って小用を足すとき、途中で止める方法。骨盤底筋を締める感覚が一番つかみやすいと思います。