ガザで起きている「生存を懸けた戦い」、展望は、課題は イスラエル、パレスチナ、エジプトの識者3人に聞いた
イスラエル軍とイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザで戦闘を開始してから半年が経過した。イスラエルがハマスを滅ぼして和平実現に進むのか、パレスチナ占領を終わらせるのが先か。米国はどの程度関与するのか。戦闘終結が見えない中、イスラエル、パレスチナ、エジプトの識者3人が現状を分析した。(聞き手は共同通信エルサレム支局長 平野雄吾) 殴打に電気ショック…水を求めると小便をかけられた イスラエル軍拷問の実態、ガザ市民が証言
【ヤイル・ヒルシュフェルド氏(イスラエルの政治評論家)】 「ハマス壊滅後に共存可能」 イスラエル軍とハマスがパレスチナ自治区ガザで続ける戦闘は、ハマスが拘束下の人質全員を解放するまで終わらせることはできない。戦闘開始後、イスラエル人とパレスチナ人が憎み合い、ひどい状況が続いている。国際社会は資金源を断つなどハマスに圧力をかけてほしい。ハマス壊滅後、イスラエルとパレスチナは「2国家共存」に向け歩み出せる。それ以外に解決策はない。 国際社会は時間がたつにつれ、ハマス拘束下の人質の安否に関心を寄せなくなった。ガザに多くの惨状をもたらしたのはイスラエルの大きな過ちだが、イスラエル人が国際社会で反ユダヤ主義を感じるのも事実だ。 ハマスは犯罪組織であり、カタールやトルコはハマスを拒否すべきだし、資金源を断つべきだ。大量殺人の罪で、幹部を法の裁きにかけることも考える必要がある。 パレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルとの共存を受け入れ、独立国家樹立を目指していたが、ハマスにその意思はなく、共存はできない。
イスラエル人は安全保障上の不安を感じている。パレスチナ国家樹立に反対するイスラエル人が多いのは、それが「テロ」抑止につながる保証がないという不安からだ。 だが、イスラエル人も考えを変える必要がある。英語に「一致団結しなければ、われわれは個々に絞首刑に処される」との格言があるが、まさにそれだ。イスラエル人とパレスチナ人は友人になる必要はないが、共に協力して「2国家共存」を実現しなければ、互いに代償を支払う。 ガザは地中海とインド洋をつなぐ要衝にあり、港を整備すれば大いに発展し、パレスチナだけでなく中東全体に利益をもたらす。アラブ諸国を巻き込む地域的枠組みが必要だ。安全のない場所に投資する者はおらず、ハマス壊滅後に域外からの投資も可能になる。(2024年3月31日取材) × × × 1944年、現在のニュージーランド・ウェリントン生まれ。1967年にイスラエル移住。1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)に至る秘密交渉の枠組みをイスラエル側代表として築いた。ハイファ大名誉教授。 【ガッサン・ハティーブ氏(パレスチナの政治評論家)】