ガザで起きている「生存を懸けた戦い」、展望は、課題は イスラエル、パレスチナ、エジプトの識者3人に聞いた
ハマスは抵抗を続けるが、ロケット弾もほとんど発射しておらず、もう武器が残っていないのが現実だ。ハマス戦闘員はガザでの市街戦、特に接近戦という戦術を採らざるを得ない。この戦術ではハマスの方が有利で、イスラエル軍もその点を承知し、対抗するためには全てを破壊しなければならないと考えている。 3月に地区最大の医療機関、北部ガザ市のシファ病院を再襲撃し破壊したが、イスラエル軍はガザの損害など気に掛けておらず、「ハマス壊滅」という目標だけを意識していることが浮き彫りになった。「焦土作戦」を展開しているとも言え、最も危険な形の戦闘になっている。 避難民ら約120万人が密集するガザ最南部ラファへの地上侵攻に注目が集まるが、イスラエルでネタニヤフ政権が続く限り、侵攻は実施されるだろう。ラファに地上侵攻しないとなれば、それは戦闘終結を意味するためだ。一方、戦闘終結はイスラエル国内で辞任要求の高まるネタニヤフ首相が退陣せざるを得なくなる状況を作り出す。汚職裁判を抱え、退陣すれば、収監される可能性さえあるネタニヤフ氏にとっては避けたいはずだ。
戦闘継続がネタニヤフ氏の個人的利益とつながっている。11月の米大統領選でトランプ前大統領が返り咲けば、かつて蜜月関係を築いただけに、風向きが変わると考えているのだろう。 国際社会でのイスラエル批判は高まるが、ネタニヤフ氏は気にしておらず、唯一考慮に入れているのが米国の動向だ。(2024年4月4日取材) × × × 1945年、エジプト北部ポートサイド生まれ。エジプト陸軍学校卒業後、軍将校や南部ルクソール県知事などを務めた。現在、アラブ首長国連邦(UAE)拠点の「グローバルセキュリティー防衛研究所」所属。