問題は豊洲市場ではない。東京都議選・西多摩選挙区、奥多摩町の現実
7月2日に投開票される東京都議選の焦点は、豊洲市場問題だけではない。選挙区ごとに抱える事情や課題、都議会選挙に関心を抱くポイントは異なる。東京都の最北西端に位置する、選挙人名簿登録者数4792人と5000人に満たない奥多摩町を訪れた。これは西多摩選挙区全体(21万1053人)の2.3%にあたる。町の人からは何度も「地域の実情をわかっている人にお願いしたい」という声を聞かされた。どの候補が応えてくれるのか、町民は見定めようとしている。
森林面積約94%、高齢化率48.8%の町
JR東京駅から中央線、青梅線と電車を乗り継ぐと、約2時間でJR奥多摩駅に到着する。雲取山をはじめとした山々への玄関口らしく、駅舎には山小屋の風格が漂う。朝早くからリュックサックを背負った登山客数人がバスや徒歩で次々と山に向かっていった。 奥多摩町は、面積の約94%を森林が占める静かな町だ。人口5270人に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は48.8%と、全国平均の27.3%を上回る。同町を含め、多摩西部の3市3町1村で構成する西多摩選挙区。定数2に対して、現職1人、新人3人の計4人が立候補している。
次のバスが発車するまで約2時間30分
25日午前11時30分ごろ、一台の選挙カーが候補者の名前を連呼しながら駅前の広場にやってきた。「高齢者の足となる公共交通の維持、充実に力を入れたい。皆さんの意見や声を、都政に反映するよう頑張りたい」と訴えた。候補者の訴えをじっと聞いていたのは、バス停の長いすに座ってたおばあさん、散歩のおじいさんくらいだった。 おばあさんに話を聞くと、峰谷地区に住む73歳で、親類宅に線香を上げてきた帰りだという。候補の話は、耳が遠くてよく聞こえなかったらしい。「うちには車がないので、バスがないと不便。でも、何を望んでも思うようにはならないからね」と淡々と話す。午前9時30分ごろから、もう2時間くらいここでバスを待って座っているというから、次のバスが発車するまで、約2時間30分も待つことになる。 バスを運行するのは八王子市に本社を置く西東京バス。東京都は、奥多摩地域を含めた地域の生活維持に必要な路線に対するバス運行補助として同社に年間約5000万円を支出している。同社によると、土日祝日に観光地へ行く便を除き、平日にバスが満員となるケースはまずないという。正午近く、ようやく停留所にやってきたバスに乗り込んだのは、この女性のほか1人か2人ほどだった。