GPIFが主導する運用機関のエンゲージメント活動は、証券市場の質的向上に貢献しているか?
この対話している企業の規模別実施比率は、「TOPIX100」の構成企業は100%で、「TOPIX Mid400」では92%、「TOPIX Small」かつ「TOPIX1000」では52%という結果になっている。
「エンゲージメント強化型パッシブファンド」は、エンゲージメントに適切なKPIを設定(中長期のエンゲージメント活動のゴール設定、達成に向けた年間の計画=マイルストーンなど)し、スチュワードシップ活動を行う組織体制が優れていると評価できる運用プランに対して委託を行っている。この運用を委託されているのは、2018年にスタートしたアセットマネジメントOneとフィデリティ投信、そして、2021年にスタートした三井住友トラスト・アセットマネジメント、りそなアセットマネジメントの合計4社だ。今回の報告書では、この4社の取り組み状況について現状報告がなされている。
アセットマネジメントOneは、18のESG課題を設定し、問題意識(課題)や目指すべき姿(ゴール)、目指す企業行動(アクション)を示し、エンゲージメント活動の方向性を明確化。重点企業を対象に各課題に基づいたエンゲージメントを実施している。8段階のマイルストーンを設定し、課題設定から課題解決までの進捗状況を定期的にGPIFに報告している。2023年度第3四半期まで、マイルストーン管理対象は448課題であり、この68%の案件で予定通り、または、それ以上の進捗がみられ、気候変動、サステナビリティ経営、デジタルトランスフォーメーションなどで72件の課題解決を実現したと報告している。
フィデリティ投信は、エンゲージメントの対象企業を、(1)時価総額1兆円以上、(2)企業価値が50%以上改善すると見込まれるという条件で絞り込み、市場時価総額に意味のあるインパクトをもたらす可能性のある大企業とのエンゲージメントを重点的におこなっている。エンゲージメント強化型パッシブ運用においては、エンゲージメントの進捗管理に、インプット・アウトプット・アウトカムの3つの指標を設け、それぞれエンゲージメントの進捗状況に応じた得点を付与し、定期的にGPIFに報告している。その結果、課題を共有するインプットの合計値は対象企業全体で計画の約7割まで進捗し、うち、約半数の企業でインプットのフェーズがほぼ完了し、企業のアクションを待つ段階に進んだと報告している。