再配達はなくなるか「ヤマトの置き配」期待と課題、ドライバーは試行錯誤、酷暑で意外なトラブル発生も
■導入後に浮き彫りとなった改善点 ヤマトは今後、サービスの改善を進めていく方針だ。現在、利用者からは「複数の置き場所を指定したい」といった声が寄せられている。戸建てで玄関先のボックスを指定しても、荷物が満杯だと自転車のかごに置くといった対応ができず再配達になることがある。 またオートロックのマンションで玄関前を指定した場合、基本的には在宅していなければならない。ヤマトのドライバーは「101号室の客にオートロックを開けてもらって配達した場合、102号室など別の部屋の客にそのまま(エントランスからインターホンを鳴らさず)届けてはならない」というルールがあるからだ。
とはいえ現場のドライバーは、独自に工夫して置き配を進めているようだ。「オートロックのマンションでは、在宅の方に開けてもらって入れれば、ほかの部屋は不在でも置き配できるし、管理人さんにお願いして開けてもらうこともありうる」(都内のドライバー)。 ヤマトは法人と契約し、マンションのオートロックを解除して配達する仕組みも進めているが、オートロックのマンションで置き配の利便性を高めることは、重要な課題になりそうだ。
始まったばかりのサービスゆえに、現場には悩みもある。利用者が荷物の中身をよく確認せずに置き配を指定してしまうケースも多いのだ。 今の時期は桃などのフルーツ、食品の荷物も多い。夏場の気温で荷物の中身が傷んでしまうケースもあるようだ。ある営業所スタッフは「宅配ボックス内でスイカが破裂してしまったという事案があった。ドライバーも客に連絡して確認するが、どうしても置き配と言われることがある」と対応に苦慮する。
■佐川も置き配サービスに追随 今後は置き配の周知を進めるべく、SNSやクロネコメンバーズの会員サイトなどで情報を発信していく。すでにテレビやYouTubeのCMでもアピールしている。「盗難などで不安がる方もいる。時間帯指定もして帰宅時間に合わせれば、荷物を置く時間を短くできる。具体的な利用シーンを示して、便利だと思っていただきたい」(ヤマト運輸個人輸送課の工藤洋平氏)。 近年は業界の人手不足、宅配ドライバーの苦労が注目され、政府も「物流革新に向けた政策パッケージ」で再配達削減の取り組みを掲げる。9月には佐川急便も追随し、宅配便の置き配サービスを開始する予定だ。
宅配の課題は消費者に密接にかかわる問題だ。荷物の中身には注意しつつ、各社の置き配サービスを積極的に利用していくべきだろう。
田邉 佳介 :東洋経済 記者