常識的には難しいが…「セブン&アイ」創業家による巨額買収を実現する“秘策”
■高いハードルを越える秘策はあるのか 逆に伊藤忠から見れば、経営陣との対立にエネルギーがかかるのであれば、セブンを持つ意味はないでしょう。ここ1~2年、コンビニ業界ではファミマとローソンが躍進する一方で、セブンは苦戦しています。4.6兆円の企業価値で停滞していたセブンに手を貸すよりも、競争で叩き潰したほうがよほど効率はよいという判断になるはずです。 要するにこのMBO案、難しいハードルが2つあって、ひとつはもともと4.6兆円程度にとどまっていたセブン&アイの買収価値を7兆円超に引き上げるロジックが見いだせるかどうか、そして現経営陣を味方に引き入れる提案ができるかどうかの2つのハードルを乗り越えないと仕組みとして成立できないのです。
そこに秘策はないのでしょうか? 実はあります。おそらく創業家はそれに気づいて動き始めたのではないでしょうか。私は今回のMBOのアイデアがひらめいたきっかけは、昨年の西武そごう百貨店売却の経験だったのではないかと推測しています。 昨年、セブン&アイは西武そごう百貨店をアメリカ系ファンドのフォートレスに売却しようとしてひと騒動を起こしました。 フォートレスというファンドはもともと不動産やリゾートの買収に強いファンドで、小売りの経験はそれほどありません。そこで百貨店の労働組合がストライキまで起こして反対したのですが、結局は押し切られて売却されてしまいます。
その際、フォートレスは2200億円で西武そごうを買収すると、即日、西武百貨店池袋店の土地をヨドバシカメラHDに3000億円弱で売却します。つまり百貨店を再建する前に、ファンドとしては買収金額を上回る利益を確定してしまったのです。 ■もし創業家が同様のことをする場合のシナリオ もしセブン&アイの創業家がこれと同じことをやろうとしたらどうなるでしょう? 実は7兆円の巨額買収は、現実味を増すことになります。