常識的には難しいが…「セブン&アイ」創業家による巨額買収を実現する“秘策”
今の創業家と経営陣の実力ではセブン&アイの企業価値は4.6兆円です。買収提案後、セブン&アイはお荷物のイトーヨーカドーの大量閉店や、スーパー事業全体を別会社として切り離す方針などを発表して、株価を上げてきましたが、やれているのはその程度です。今の経営方針に任せておいて時価総額が7兆円を超えていくのであれば、最初から株を買っておけばいいだけの話で、わざわざリスクをとってMBOに参加する意味が見いだせません。
■「白馬の騎士」になりうるのは事業会社か そうなると消去法でいけば白馬の騎士になりうるのは事業会社だけです。今回具体的に注目されたのが、創業家が伊藤忠商事に声をかけているという話です。他にも三井物産が参加するのではないかという観測もあります。この記事では伊藤忠のMBO参画の可能性を軸に、その実現性を検討したいと思います。 伊藤忠はもともとイトーヨーカドーがアメリカのセブン-イレブンと最初の契約を結ぶ場面の仲介役となった総合商社です。商社の中では食品に強いという特色もあります。一方でファミリーマートを子会社にしています。
伊藤忠が仮にセブン&アイの大株主になると独禁法上の問題が生じるという意見がありますが、私はこれはそれほど問題にはならないと考えます。理由は小売業界全体にはスーパーやドラッグストア、ディスカウントストアなどコンビニと競争する業態がたくさんあって、たとえコンビニ業界の1位と2位が一緒になるような事態が起きたとしても独占状態にはならないからです。 別の言い方をすれば、日本を代表する企業をカナダからの買収から防衛するという大義のほうが優先されるはずだという読みがあります。
ではこのように創業家が伊藤忠商事と組み、メガバンクからの融資も受けたうえでMBOを行うとした場合、何が問題になるのでしょうか? このスキームで一番脅威を感じるはずなのは井阪社長以下のセブン&アイの経営陣です。そもそもACTとの企業防衛に関わる戦いは、現在の経営方針を貫くための戦いです。カナダからの経営介入を退ける代償として、新たに筆頭株主になるであろう伊藤忠からの介入を受けることになります。最悪、ファミマとの対等合併を強いられるとともに、現経営陣は経営から外されるリスクも考えられます。