2026年からの次期F1パワーユニットで、エンジンが担うふたつの役割。ホンダ角田LPL「いかに長時間発電するチャンスを得るか」
HRC(ホンダ・レーシング)でF1プロジェクトのラージ・プロジェクトリーダーを務める角田哲史エグゼクティブエンジニアは、2026年からの新規則下のパワーユニット(PU)について説明。そのエンジンは推進力を生み出すために使うほか、加速が必要のない場合でも全開で稼働させ、レンジエクステンダーのように発電に活かすことになるだろうと語った。 【動画】F1由来の技術を満載し空を飛ぶ……Honda eVTOL 2026年からのF1は、PUのレギュレーションが一新される予定となっている。エンジンの構成は1.6リッターV6ターボと今と変わらないが、それと組み合わされるハイブリッドシステムで扱う電気エネルギーの量が激増する予定で、エンジンの出力とハイブリッドシステムの出力が同等になる。 ただそうなった場合、走行中に電動エネルギーを十分に回生することができず、ストレート走行中にブレーキをかけ、電動エネルギーを回生しなければいけなくなるのではという指摘もある。 昨年夏の段階で角田LPLは、2026年からのPUについて、次のように語っていた。 「基本的には減速時のエネルギーで回生しますが、それだけでは足りません。そのため、フルブレーキング時以外はほぼ全開でエンジンを回し、MGU-Kで発電することでブレーキをかけ、トルクをコントロールすることになります」 「つまりコーナーを曲がっている間もMGU-Kで発電し、充電します。エンジンの全開率はものすごく上がり、モンツァでは90%くらい全開で走ることになります」 そう語っていた時から約半年が経過。その間に開発も進んだはずだが、昨年の時点から今までの間に、想定で何か変わった部分はあるのか? それについて尋ねると、角田LPLは次のように語った。 「以前お話しした使い方の想定と、変わらないと思います」 角田LPLはそう語った。 「基本的にハイブリッドカーは燃料で走っています。その燃料をどう使って、どう電気エネルギーに変換していくかということになります」 「ストレートで上がった車速を利用するのはもちろんですが、それ以外にもどう発電してエネルギーマネジメントしていくかというところは、やはりICE(内燃エンジン)が主体になってきます。ですので、いかに長時間発電するチャンスを得るかということは変わらないと思います」 市販車には、レンジエクステンダーと呼ばれる電気自動車がある。これはバッテリーだけではなくエンジンも搭載する電気自動車で、そのエンジンを動力としてではなく、バッテリーに充電する発電機として使うのだ。 つまり2026年からのF1用PUは、このレンジエクステンダーとしての役割も併せ持つことになるというわけだ。 「加速の時には、当然エンジンの出力を直接使うことになります。しかし減速時やコーナリング中には発電しながら貯めていく……次のストレートに向けてエネルギーを貯めていくということになります」
田中健一