天王星に1個、海王星に2個の新しい衛星を発見! 天王星は20年ぶり
■見つけにくい衛星を新しい方法で探索
そのような状況の中で、カーネギー研究所のスコット・S・シェパード氏などの観測チームは、天王星と海王星を周回する新しい衛星の発見を報告しました。シェパード氏はそのような観測が難しい衛星を多数発見していることでよく知られており、他の天文学者と協力して四大惑星の新たな衛星を2000年以降に100個以上も見つけています。特に、木星と土星の衛星についてはその半分以上の発見にシェパード氏が関わっています。 新衛星はいずれも視等級が25~27等級という極めて暗い天体であり、そのまま撮影したとしても背景のノイズと区別することができません。そこでシェパード氏らは撮影方法を見直し、従来の1回の長時間露光ではなく、数十回に分けた短時間の露光を重ね合わせる処理を行う方法に切り替えました。こうすれば、衛星よりもずっと明るい惑星や背景の恒星からの光を抑えつつ、衛星からの暗い光を強調することができます。今回発見された新衛星はいずれも、1日あたり3~4時間の撮影時間中に5分間の短時間露光が繰り返し行われました。 なお、これらの新衛星は発見されたばかりであるため、固有名は与えられていません。現時点では機械的に割り当てられる仮符号が正式名称となります。仮符号の命名規則は上画像に譲りますが、特に4桁の数字は初めて観測された年のことであり、新たな衛星として認識された年を意味しているわけではないことに注意が必要です。
■20年ぶりの天王星の新衛星「S/2023 U 1」
天王星の新衛星「S/2023 U 1」は、シェパード氏の他、JPL(ジェット推進研究所)のMarina Brozovic氏とBob Jacobson氏によって発見されました。「マゼラン望遠鏡」(チリ、ラス・カンパナス天文台)が2023年11月4日に撮影された画像に写ったことで初めて気づかれましたが、過去のデータを振り返って分析すると、最も古い観測記録は「すばる望遠鏡」(ハワイ、マウナ・ケア山)による2021年9月8日の撮影画像にまで遡ることがわかりました。天王星に新しい衛星が見つかるのは実に約20年ぶりで、2003年10月9日に公表された「マーガレット」以来となります。 S/2023 U 1は、天王星から平均で約798万km離れた楕円軌道を、約681日(約1.86年)かけて公転する逆行衛星(※2)であると分析されています。この公転軌道の性質は天王星の他の衛星「キャリバン」や「ステファノー」と似ています。直径はわずか約8kmであると推定されており、発見されている最も小さな天王星の衛星である可能性があります。 ※2…通常の衛星の公転方向は惑星の自転方向と一致しており、これを「順行衛星」と呼びます。「逆行衛星」はその逆、つまり衛星の公転方向が惑星の自転方向と逆であるものを指します。 衛星のような珍しい分類の天体には、通常は神話に因んだ命名がされますが、天王星の衛星の固有名はウィリアム・シェイクスピアの戯曲か、アレキサンダー・ポープの詩『髪盗人』に登場する人物の名前に因んで命名するという例外的な慣習があります。現時点では、天王星から遠く離れた位置を公転する逆行衛星は全てシェイクスピアの『テンペスト』の登場人物に因んで命名されているため、S/2023 U 1にもそのような命名がされると予想されます。