こ、これが東京「免許センターメシ」のクオリティなのか… 驚くべき“食堂”の進化! 鮫洲・江東・府中で食べ比べてみた
重々しさは東京随一?「府中」の食堂
府中へは、食事だけを目的に来場しました。鮫洲のポップな雰囲気とは真逆で、府中は昭和時代から脈々と続く重苦しい雰囲気を醸し出しています。 その重々しさが更新者にも連鎖するのか、バスから降りてくる人たちも皆無言で神妙な面持ち。もっとも府中の試験場は目の前が多摩霊園なので、この重々しさはエリア全体に漂う空気が生み出すものかもしれません。 しかし、この緊張感が筆者は嫌いではありません。講習で見る「事故直前の運転者のハッとした顔で止まる」ビデオや、警察官特有の筆記で、教官が黒板に書き出す事故件数や悲惨な状況を学べば、自らの運転を引き締める効果があると思うからです。 そして、そんな重く厳しい講習の前後、地下の食堂でいただくランチは束の間の癒しのひとときにも。このコントラストもまた府中特有のものであり、筆者にとっては意外と好きだったりもするのです。 さて、筆者が府中に訪れたのが朝イチだったこともあり、食堂にはモーニングメニューがありました。このうち、筆者はモーニングカレー(450円)をオーダーしました。ワンプレートにサラダと少なめのご飯、その上にいかにもコクがありそうなカレールーがドーンとかけられております。 仕込んで間もない朝イチだからなのか、カレールーの具材は崩れずに原型を留めており、トマト、玉ねぎ、肉など複数の具材が複雑に混ぜられていることを確認しました。 口にするとこれがまた美味。コク深いのにくどくなく、実に過不足ない味わいで朝イチでもかなり美味しくいただくことができました。重々しい空気の中でいただく府中の食堂のカレーは、親から厳しく叱られた後にスッと出されるご飯のような、優しい味わいだと感じました。 府中で朝食を済ませた後は高速道路に乗り、ランチを食べに江東の試験場へ向かいました。
食堂のすぐ横で免許を受け取る「江東」
実は筆者、江東の試験場に行くのは初めてでしたが、ここには駐車場がありませんでした。近隣のコインパーキングにクルマを停め、試験場の中に入るとすぐ係員が筆者に歩み寄り「更新ですか? 予約はありますか? ないですか?」と声をかけてきました。 一瞬ビクッとしましたが、ウソをつくのも良くないので「いえ、食堂を利用したくて」と言うと、「それなら4階に上がってください」と素早く返答。その後、係員はまたすぐに、筆者の後ろの来場者に声をかけ、行く先をテキパキと案内していました。 係員が細かく行き先を聞くのには理由がありました。江東の試験場は鮫洲、府中に比べて敷地が圧倒的に狭く、来場者の動線が狂うと大混乱を招きかねないようです。そのため、高い位置に大きな表示があり、各所に色分けされた道筋ができていました。 その整理感は鮫洲、府中とは比べられないほど徹底されています。やや威圧的に感じるところもありましたが、円滑に更新業務を進めるための施策として思えば、来場者も当然キビキビと目指すべき窓口に向かうべきでしょう。 先ほどの係員に教えてもらった通り、エレベータで4階へと上がりました。やはり限られた敷地だからなのか、免許証の交付窓口と食堂がワンフロアに共存しています。結果として交付窓口にカレーやラーメンの香りが漂うという独特の状況ですが、新しい免許証交付を待つ人々を横目に、筆者は食堂でランチを交付してもらうことにしました。 メニュー構成は鮫洲、府中とほぼ同じ。ここで筆者は醤油ラーメン(650円)をオーダーしました。 食堂のカウンターには、「はい、あなたこっち!」「はい、番号でお呼びします!」とキビキビと注文者の動線を正す初老のスタッフの方がおり、その厳たる所作はまさしく警察官的。もしかしたら元警察官の方が定年後の再就職などで働かれているのかもしれません。 言われた通りに待つと、筆者の番号が呼ばれました。サーブされた醤油ラーメンは、いかにもザ・昭和なビジュアルで、食堂のラーメンのお手本のような完璧ぶり。 スープをすすると、これがまた絶品。普通の町中華のお店と比べても負けず劣らず、あるいは凌駕する味わいであり、優しい和風だしが丸く舌先を癒してくれます。また、黄色いちぢれ麺、焼き豚もスープにバッチリ合っており、江東の食堂が好きになりました。
美味しさがアップした理由とは?
鮫洲、府中、江東いずれの試験場の食堂も甲乙つけがたく、かつてよりもかなり美味しく感じました。 3か所とも昔から東京都交通安全協会が運営しているのは変わりませんが、どうやら2010年代以降、高級ホテルや旅館で腕を振るっていた料理人を積極的に採用していたそうで、そのことが関係しているようです。以降、試験場の食堂は、味の向上を目指し、メニュー改正を繰り返してきていると言われています。 やや緊張感のある試験場の食堂でいただくその味わい。免許更新時には事故防止のための講習と合わせて、必ず訪れたい場所です。
松田義人(ライター・編集者)