【ライオンズ育成最前線】西武・菅井信也『獅考トレーニング』で変わった意識
当たり前のことを大事に
プロ1年目の22年は体力づくりに重点を置き、イースタン・リーグで3試合登板だったが、昨年はファームの先発ローテーションに入り、15試合登板で4勝2敗、防御率3.12をマーク。シーズン終了後のフェニックス・リーグでは、主力打者を並べた阪神を6回1失点に抑えた。 「試合で投げることで反省点が見つかり、次の登板まで課題を克服する練習に取り組みます。登板日は反省点をノートに書く時間を大切にしています。あらためて感じるのは、小さなこと、当たり前のことを大事にする意識です。練習だったらキャッチボールから自分のフォームに向き合う。試合はバッターと対戦することに集中するので、何も意識せずに思い描いたフォームで投げられるように心掛けています」 菅井は昨年まで西武で指導をしていた内海哲也ファーム投手コーチ(現巨人一軍投手コーチ)への感謝の思いを口にする。 「内海さんにはつきっきりで見てもらいました。僕はイライラしても周りに言わずため込むタイプだったんですけど、内海さんに『独り言でも言ったらすっきりする』と言ってもらって。確かに口に出したほうが、気持ちが楽になりました。技術面でも自分と違う意見を納得できる形で指摘していただけるので、自分に必要なこと、必要ではないことが明確になりました」
穏やかな口調でインタビューに答える菅井だが、マウンドに立つと負けん気は強い。デビュー登板で球界を代表する強打者・村上を3打数無安打に抑えたことを聞くと、「体がすごく大きかった。本塁打だけ打たれないように。でも『真っすぐで押したろ』と。意外と負けず嫌いかもしれません」と笑みを浮かべる。 心技体がそろわないと、一軍の舞台では活躍できない。菅井は「僕は打たれると気持ちが荒れちゃう。でもホームランを打たれて、試合中に『どうすれば良かったかな』と引きずると良い結果が出ません。気持ちを切り替えて次の打者に集中したほうがいいし、反省点は試合が終わってから考えるようにしています」と語る。 気持ちの切り替え――。その言葉を象徴する場面があった。ヤクルト戦で3回に山田に2点目のソロを浴びたときだ。二死を取って自分のペースに持ち込むかと思われた矢先に、スタンド最前列へ一発を浴びた。だが、「気持ちが崩れることはなかったです」。後続を抑えると、4、5回も三者凡退ときっちり抑えた。 西武は最下位に低迷し、苦しい戦いが続いているが、若手は自分の存在価値をアピールするチャンスだ。菅井は「獅考トレーニング」を受講した際、講師を務めた坂田氏のあるメッセージが心に深く刻まれているという。 「『変化を恐れないものが勝つ』とおっしゃっていて。チャレンジしたり、新しい取り組みをして得られることがあるので、恐れずにやってみようと思います」 先発陣で不可欠な存在へ。サクセスストーリーは始まったばかりだ。
獅考トレーニングとは?
自己の課題に対して主体的に取り組み、活躍できる選手になるための思考トレーニング。自己理解の方法、目標の決め方、アクションプランの立て方を学ぶ。 取材・文=平尾類 写真=兼村竜介、桜井ひとし、毛受亮介、BBM
週刊ベースボール