【ライオンズ育成最前線】西武・菅井信也『獅考トレーニング』で変わった意識
目標から逆算
このトレーニングは外部講師の坂田賢二氏を招き、入団2年目までの選手を対象に2カ月に1回のペースで行われる。新人選手は目標設定の重要性、自己理解を深め、2年目の選手は思考の幅を広げ、さらに深く内省する。選手たちは用意されたワークシートに現状の自分に足りないものを記入し、目標を達成するために必要なアクションプランを立てる。 菅井はこの獅考トレーニングを受講し、自身の意識の甘さを痛感したという。 「ワークシートに球界を代表する投手になりたいって書いたんですけど、『ざっくりし過ぎている』と指摘されて。着実にステップアップするために、具体的に何をするべきか過程を考えるようになりました。球速アップにつなげるためには、ウエート・トレーニングの重量を増やし、体重も増やさないといけない。そのためには食事の量を増やすと、目標から逆算してやるべきことを考えられるようになりました。変化球も回転数や球速が測れるので、目指す数値が明確になります」 さらに「自分は正直、こういう作業があまり好きではなかったんです。目標を立てなくてもできるだろう、と。でも最初はワークシートに何も書き込めなくて。目標を立てて、そのための行動を書き込むことで意識が変わりましたし、頭の中を整理して練習に取り組めるようになりました」と、その効果を口にした。 ワークシートで見つめ直すのは、ユニフォームを着ているときの行動だけではない。「なぜ寮を歩くときにスリッパを履くのか」「なぜ起床してすぐに食事を取るのか」――。すべての行動が野球のパフォーマンスに影響を及ぼす。私生活を見つめ直すことで、菅井の意識も変わった。 「僕は7時間以上寝ないと、次の日の体のコンディションが良くない。午後11時に寝て、午前7時に起きて8時間睡眠をとるようにしています。寝られないときは無理に寝ようとするのではなく、心を一度落ち着かせてから寝るようになりました。ストレスを感じずに心を落ち着かせる対処法ができたように感じます。あと最近の話ですが、スマホを使う時間が多くて頭が重くなる感覚があったので、少しでもスマホから離れるために漫画を買いました」 「獅考トレーニング」の進捗状況などを意見交換するため、21年から新設された人財開発担当が入団2年目以内の選手たちと、「1on1」と呼ばれる定期面談を月に1回のペースで実施している。青木智史育成コーチ兼人財開発チーフは面談を重ね、菅井の変化を感じたという。 「本人の中で変わりたいという思いがあったんでしょう。言語量が多くなりました。コーチにどういう指示を受けたのかをしっかり答えられていましたし、良かった面と悪かった面、次の1カ月に向けて継続する部分、新しいアクションを起こす部分、切り捨てなきゃいけない部分がきっちり判断できていました」