バイデン氏、次男ハンター氏に恩赦 トランプ氏「司法の乱用」と批判
バイデン米大統領は1日、銃を購入した際に薬物依存を申告しなかった罪や脱税罪などに問われた次男ハンター氏に恩赦を与える署名をしたと発表した。いずれの事件も12月中旬に量刑が言い渡される予定だった。 バイデン氏はこれまで恩赦を与えない考えを示してきた。その姿勢を一変させ、大統領の権限を家族の利益のために使った今回の行動には批判が高まりそうだ。ただし、バイデン氏は来年1月の退任を前に「レームダック(死に体)」化が進んでおり、政治的な影響は限定的とみられる。 バイデン氏は声明で「ハンターが標的にされたのは、私の息子だからだという結論に達するだろう。そしてそれは間違っている」とし、「政治的な思惑がこのプロセスに影響を及ぼし、司法の誤りにつながったと考えるようになった」と主張。「父親であり、大統領でもある私がこのような決断に至った理由を、米国民の皆さんに理解していただければと思う」と訴えた。 ホワイトハウスが発表した恩赦の文面では、ハンター氏が「2014年から24年12月1日までの期間に犯した、あるいは犯した可能性がある、あるいは関与した」すべての犯罪行為に「完全かつ無条件の恩赦」が適用される。 米NBCニュースによると、ハンター氏は「薬物依存症の渦中で、私は多くの機会と強みを無駄にした。今日与えられた慈悲を決して当然と思わず、再建した人生を今も病気で苦しんでいる人たちを助けるためにささげる」とする声明を発表した。 ハンター氏は18年10月、東部デラウェア州の銃販売店で、自身の薬物依存について申告せず、書類に虚偽の記載をして回転式拳銃1丁を購入し、不法に拳銃を約11日間所持したとされ起訴された。東部デラウェア州の連邦地裁の陪審は24年6月に3件の罪状すべてで有罪とする評決を出した。量刑は12月12日に言い渡される予定だった。 また、ハンター氏は16~19年分の税金少なくとも140万ドル(約2億円)を支払わなかったとして脱税罪などでも起訴された。ハンター氏は24年9月に西部ロサンゼルスの連邦地裁に出廷して脱税罪など九つの罪を認めた。量刑は12月16日に言い渡される予定だった。 ◇トランプ氏も親族に恩赦の過去 一方、トランプ次期大統領は自身のソーシャルメディアに、今回の恩赦の対象に21年1月6日に起きた連邦議会襲撃事件で投獄された人たちも含まれているのかと皮肉ったうえで、「司法の乱用、誤りだ!」と投稿した。 ただし、トランプ氏は1期目の20年、義理の息子であるジャレッド・クシュナー氏の父親で不動産開発業者であるチャールズ・クシュナー氏に対して恩赦を与えた。チャールズ氏は脱税や違法な選挙献金などの罪に問われ、有罪を認めていた。【ワシントン西田進一郎】