「マッサン」放送から10年、ブームがジャパニーズウイスキーにもたらした影響は 市場に起きた大変化
“ジャパニーズウイスキーもどき”に警鐘、日本市場に求められることは
このように、国内外での需要が高まる一方で、新たな問題も生まれているという。 「日本では、2021年に日本洋酒酒造組合がジャパニーズウイスキーの表示に関する基準を発表し、例えば、糖化・発酵・蒸留は日本の蒸留所で行う、熟成については700リットル以下の木製樽を用いて国内で3年以上は貯蔵するなど、産地や製法についての規定が明確になりました。ラベル表記は“ジャパニーズウイスキー”で統一され、要件を満たしていない場合には、日本を想起させる地名や人名、国旗等を表示しないともされています。 しかし、組合に属さない企業はこれを守る必要もありませんし、罰則などももちろんありません。海外などでは、焼酎のような製品がジャパニーズウイスキーとして売られていることもあると聞きます。ほとんどが輸入原酒で構成されているようなブレンデッドウイスキーが、お店によっては“100%ピュアなジャパニーズウイスキー”として認識されていたりするんですよね。海外からのお客様などで、いわゆる純粋な日本産の“ジャパニーズウイスキー”を求めていらしているのに、十分な説明も受けられず、そういった商品を買ってしまう方もいるとのこと。ですから“お酒のプロ”として店頭に立つ以上、正しい知識を持ってきちんと説明させていただくことが使命だと思っています。 海外産のウイスキー原酒を使って、日本の技術力と感性で、ブレンデッドウイスキーを造ることは素晴らしいと思います。日本が造るワールドブレンデッドウイスキーは美味しいものばかりです。せっかく築いてきた日本のウイスキーのブランド力を保つためにも、我々のようなウイスキーを専門に扱う酒販店のスタッフも、知識をブラッシュアップしたり、努力を続けなければいけないのではないかと思います」 空前のジャパニーズウイスキーブームがもたらした光と影。後編では、ジャパニーズウイスキーが海外でも広く愛される理由や、勢いを増すクラフト蒸留所の発展、ジャパニーズウイスキーの展望に焦点を当て、深堀りしていく。 (取材・文/篠宮明里)
倉島英昭(くらしま・ひであき) 東京駅八重洲地下街「リカーズハセガワ本店」店長。4代目マスター・オブ・ウイスキー。雑誌『ウイスキーガロア』テイスター、ウイスキーテイスティングクラブBLINDED BY FEAR ディレクター。また、ウイスキー文化研究所ウイスキースクールおよびカルチャースクール世界文化社セブンアカデミーウイスキーの講師も務める。 デイリー新潮編集部
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