"島流し軍団"吉本 大宮セブンに支配人がかけた言葉「好きなことだけをやれ。お金はこっちで用意する」
僕ら芸人は接待に駆り出され
安部 あの人がいなかったら、全員、離散していたと思います。普通にやっていてもお客さんは入らないものだから、支配人が地元企業の社長さんとかと仲良くなって、僕ら芸人は接待に駆り出されるんですよ。「ちょっと空いてるか?」とか言われて、お祭りの実行委員会のおじさんと飲んだりしてね。普通だったら「俺たちは芸人。そんな接待みたいな真似できるかよ!」なんて反発もあるんだろうけど、支配人自身が身を削ってやってくれているのがわかるので、みんな喜んで出席していましたよ。 大波 その支配人がすごいなと思ったのは、接待なのに相手側に合わせることを一切しないんですよ「とにかく自分たちが面白いと思うことだけやればいい」と言われて、その場が滑ってようが関係なし。接待というわりに、先方を喜ばせようという意識が最初からないんです。 安部 ひどいときはカレー屋でインド人の従業員相手に漫才やっていましたからね。そんなのウケるわけないじゃないですか(笑)。 ──芸人たちの間では「支配人を男にしよう!」という意識があった? 大波 確実にありましたね。というか、今でもあります。号令がかかったら、全員が問答無用で集まると思いますよ。 安部 「大宮セブンとは何か?」「どうしてできたのか?」って考えていくと、結局、一番核となる部分を担っていたのは社員さんだったのかもしれません。 ──これから『くすぶりの狂騒曲』を観る人に向けて、伝えたいことはありますか? 安部 僕らは芸人としてものすごく稀なケースだし、めちゃくちゃラッキーだったと思うんですよ。実力があっても売れなくて辞めた仲間もいっぱいいて、そんな中で僕らはたまたま大宮セブンのおかげで延命できたし、配信とかの流れに乗れたから、どうにか食えるようになったというだけであって……。だから、この映画を観て「芸人ってすごいな。頑張ったら報われるんだな」なんて思ったら大間違い。ましてやこの映画を観て芸人を志すなんていうことは絶対にやめてほしいんです。 大波 そもそも映画上でも大して報われていないけどな(苦笑)。 安部 まぁね。「しょせん人生なんてこんなもん」っていう映画やもんな。 大波 この映画で伝えたいメッセージがあるとしたら、「夢を追うなら、助けてくれる仲間がいる環境に身を置いたほうがいい」ということになるかな。僕ら、周りの助けがなかったら絶対にここまでやってくることはできませんでしたから。 安部 そうやね。やっぱり仲間だけは大事にしたほうがいい。それはしみじみ感じます。 ▽タモンズ 東京NSC11期生。ツッコミ担当の大波康平とボケ担当の安部浩章によるコンビ。2006年結成。THE SECOND ~漫才トーナメント~2024ファイナリスト。同期はチョコレートプラネット、シソンヌ、向井慧(パンサー)、すゑひろがりずなど。 【後編】大宮の劇場に“島流し”タモンズが諦めなかった理由「俺らのほうが面白いやろって思っていた」は下の関連記事からご覧ください。
小野田 衛