岩手県が絶滅危惧種イヌワシの生息地を公開の訳 巨大風車群の建設ラッシュ対策で練りだした秘策
その場所は、約100ヘクタールの鳥類保護区特別保護地区のうち、日本野鳥の会もりおかなど自然保護団体が管理する約8ヘクタール。地元の自然保護団体が28年前に確保した造林地だ。 岩手イヌワシ研究会などが土地所有者の協力を得てイヌワシの観察を続けてきた地域を保全しようと、岩手県自然保護協会、日本野鳥の会盛岡支部(当時)などが要請し、盛岡市が1995~1997年に93ヘクタールの土地を取得。さらに、その隣接地8.4ヘクタールを当時の財団法人日本野鳥の会が、ゼネラル石油株式会社(その後エクソンモービル・ジャパングループ)からの寄付金で取得し、「エクソンモービル野鳥保護区イーハトーブ盛岡」と命名した。
初めての列状間伐は、1998年と1999年の9月に実施。1999年の5月から列状間伐の2~3年後にかけ、由井博士らは間伐地でノウサギのフンを数える調査を行った。 その結果、列状間伐を行った伐採区間は、フンの密度が伐採していない林内に比べ、12~16倍もあった。ノウサギの密度に換算すると、列状間伐前に比べ、ここの造林地全体の平均で7.5倍になった。2013年には、近くに営巣するイヌワシのペアが繁殖に成功したことが確認されたという。
日本野鳥の会もりおかなど保護団体の人たちは、この26年の間、秋になるとボランティア活動で列状間伐やその後の刈払いなど森林整備を行い、イヌワシが生き続ける環境を創り出してきた。その取り組みは国有林や県有林にも波及し、全国にも広がりつつある。 ■北上高地に押し寄せてきた風力発電事業 岩手県内の風力発電事業の計画は、2年前まで北部に集中していた。しかし、北上高地の西端にある盛岡市内で「姫神ウィンドパーク事業」が2019年4月に運転を開始したとき、日本野鳥の会もりおかのメンバーは、「イヌワシの生息地である北上高地に風車が林立するのではないか」と危惧した。