「麻酔治療が必要なむし歯は1本もなかった」司法解剖した医師が証言 死亡した2歳女児 背景に過剰治療か
■判決確定前の異例の証言「再発防止に役立てて」 今回、司法解剖した池田医師が、叶愛ちゃんには「麻酔が必要なむし歯はなかった」と証言しました。叶愛ちゃん死亡の背景に過剰治療の可能性があることを示唆する重要な証言です。 九州大学名誉教授・池田典昭医師 「刑事事件の症例は結審するまで発表しないというのが原則なんですけど、わたしはいっさい聞かずに、ほとんどすべて報告したり論文だしたりしています。啓発をしないといけない。それが死んだ人のためになると思ってやってきた。子供に障害を残したり死亡させたりしたら絶対にだめだというのが私の信念だ。再発防止。このままではまた起きてしまう。また起きるといいましたけど、起きてほしくないなと思っています。今回の事件も再発防止の役に立てばいいなと思います」 ■歯科治療後に幼い子が死亡 2000年にも 幼い子供の歯科治療をめぐっては2000年にも、福岡市内で当時2歳だった佐々木桃香ちゃんが治療後に死亡する事件が起きていて、池田医師が司法解剖しています。桃香ちゃんのケースでは、16本すべての歯が治療対象になっていて、父親は開示されたカルテで初めて知りました。 桃香ちゃんの父佐々木富雄さん 「1歳6か月の時に保健所で受けた検診では、特別指摘されたことはなかったのに、その数か月後、歯科医院ではすべての歯が治療対象になっていたんです。その時に思いました。『桃香の顔はお札に見えていたんだろうな』って」 ■過剰治療裁判の争点になっていない 桃香ちゃんの裁判でも、そして今回叶愛ちゃんの裁判でも、過剰治療の有無は争点になっていません。 2人を司法解剖をした法医学者で医師の池田典昭さん。「このままではまた同じことが起きてしまう」という危機感から証言してくれました。 九州大学名誉教授・池田典昭医師 「幼い子供が歯科治療後に亡くなる、そして司法解剖になるケースはめったにあるものではありません。叶愛ちゃんの司法解剖を依頼された時、『またか』と思いました。めったにないことがまた起きてしまった。叶愛ちゃんの事件、私としては検察には、治療の適否にまで踏み込んでほしかったと思っております」 RKBの取材に対し、歯科医院・院長(当時)の代理人弁護士は「係争中の事案なので裁判所外での意見表明は差し控える」としています。
■両親の後悔 「あの時歯医者にさえ連れて行かなければ、今も元気でいるはずなのに」両親の後悔が消えることはありません。 叶愛ちゃんの父 「あの時歯医者に行かなければ、叶愛は今も元気でピンピンしているのに。あの時なんで…」 叶愛ちゃんの母 「時間がたつほどさみしくなります。叶愛に会いたくてしかたがない」 「幼い子どもに過剰な治療が行われやすい」という構造的な問題に目をつむっていていいのか。失われた命が問いかけています。
RKB毎日放送