「麻酔治療が必要なむし歯は1本もなかった」司法解剖した医師が証言 死亡した2歳女児 背景に過剰治療か
■子供の歯科治療は「過剰治療になりやすい」 実は、小児の歯科治療をめぐっては「過剰治療」になりやすい構造的な問題がかねてから指摘されています。歯科医師の数はこの40年で約2倍に増えました。一方、少子化で子どもの数は減少、さらにむし歯になったことのある3歳児の割合は8分の1に減りました。 また、今の医療保険制度では、歯を削るほど高い診療報酬が得られるしくみがあります。歯を1本削った場合、歯科医師が得る保険点数は120点(1200円)です。その後に詰め物をする処置まで含むと、315点(3150円)になります。一方、削らずに進行止めの薬を塗った場合は、3本までは一律に46点(460円)なのです。 そして、小児の場合はさらに利益が大きくなる構造があります。6歳未満の場合、歯を削る治療の診療報酬は大人の1・5倍になるのです。「子供の治療は難しい」という理由からです。 ■「誠実に患者に向き合うほど経営は苦しくなる」 現場の歯科医師は「誠実に患者に向き合うほど経営は苦しくなる」と以前から過剰治療の問題に警鐘をならしていました。 警鐘をならしてきた歯科医師 大崎公司さん 「1200円をとるか、460円をとるか。モラルハザードを起こしたら、『これ削ってやろう』となってしまう」 警鐘をならしてきた歯科医師 内野博行さん 「むし歯が減ってきたため治療の対象を広げすぎているのではないか。以前なら応急処置以外は治療しなかった3歳未満のむし歯や治療可能な年齢であっても昔なら治療しなかったような小さなむし歯が削られている実感があります。子供の歯科治療が、医業収入を上げるための草刈り場になっているのが現実ではないでしょうか」 ■「過剰な治療」親が気づきにくい 構造的な問題は、さらにあります。少子化対策で子どもの医療費は助成の対象となり、多くの自治体が無料としています。このため、幼い子どもに過剰な歯科治療が行われたとしても、親に治療費が請求されることはありません。「過剰な治療」に親が気づきにくいのです。