内田雄馬のエゴと覚醒「僕らは観られて初めて完成する存在」
お芝居において、自分に固執しないことがとても大事
――物語の中では「エゴ」と「覚醒」が大きなキーワードだと思うんですが、内田さん自身は仕事に対してのエゴですとか、譲れない部分はどういったところになりますか? いただいたディレクションに対していかに変われるか、という仕事なので、その中で何を自分の中で大切にするのか、という話なんですよね。となると、僕らの仕事っていうのは、1人では作れない仕事だと僕は思っていて。 世の中にはいろんな役者さんがいます。例えば、周りを自分のフィールドに飲み込んで発揮していくタイプの人もいますが、そういうタイプではなく、どちらかというと繋ぐ方でありたいと思っています。 引っ張る人たちは絶対に必要だけど、それを繋ぐ人も必要だと僕は思うんですよね。それぞれが一番いい力を発揮できる環境にできるような、そういう考え方も必要だな、と。 だから僕の場合は、自分からいかに変われるかってことが結構大事です。 ――変化に柔軟なんですね。 お芝居において、自分に固執しないということがとても大事なんですよね。その中にちゃんと個性って出るんです。自分の人生経験とか感じてきたことが、ディレクションを受けて芝居を変えたとしても残っていくので、「これが自分の個性だ」と自分で思い込むんじゃなくて、出てきたものが個性を表してくれるんです。だから、いろんな人の言葉を受けて、いかに自分の中に落とし込めるか、ということは大事なのかな、と思います。それもエゴだと思いますし、自分の意見について、頑なになるだけがエゴじゃないと思いますね。 ――いろんなお仕事をされている中で芝居において自分が覚醒したな、と自覚した瞬間はありますか? 自分ではあんまりないですけど、僕らは多分、見られて初めて完成する職業なので、自分がいい芝居だなと思っても、受け取り手次第で変わってきますよね。そういう意味では多分、本当に自分が変わっていってるかどうかは、結果でしかわからないような世界なのかな、と思います。 覚醒……調子がいいときは噛まない、とかそれぐらいですかね(笑)。今日は全然噛まなかったな、というときはある意味覚醒しているのかも。噛まないからいい芝居なわけでもないんですが。 ――ご自身の中で、ってことですもんね(笑)。 そうです。だから芝居が覚醒したかどうかは正直自分ではわからないですね。 どんなに「今日は入り込んでいたな」と思う日でも、別にそれは自己満だよねって話ですから。自己満ってすごく大事なんですけど。 でも少なくとも、いい芝居だったと思えたような日の収録は、僕だけじゃなく、みんなで録っていて生まれたいい芝居だと思います。それをみんなで作れるようにしていくことは大事かなと思います。 ――最後に今回の『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』、改めて内田さんから見て推しポイントを教えてください。 『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』は、TVシリーズと時間軸が重なる部分も入れて、1本作っているところが面白いと思います。 同じシーン、同じ瞬間だけど視点を変えてみると、感じ方ってこんなに違うんだなと思うことが日常でもあると思うんです。立ち位置を変えて考えるということ、相手の目線に立って考えたらわかることってたくさんあると思うんですが、『ブルーロック』はそれを作品の中で描いていて、潔を主人公として見たら強く成長していくかっこいい存在に見えるかもしれないけど、敵として見たときは「どんどん変わって強くなっていく、めちゃくちゃ怖い存在に見える」といったような、その視点の違いのおもしろさを今回の劇場版では楽しんで欲しいなと思います。 あとはやっぱり凪と玲王のコミュニケーションです。もどかしいところはたくさんあるんですけど、だからこそ、すれ違ってもなお大事にしているものがあるし、その中でどういう風に変わっていくのかが成長だと思います。その過程が今回の劇場版で描かれているので、いろんな視点から『ブルーロック』を楽しんでいただける、そんな作品だと思うのでぜひとも劇場で、動く凪たちを楽しんでもらえたら嬉しいなと思っています。 取材・文:ふくだりょうこ <作品情報> 『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』 全国の映画館で公開中! (C)金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会