なぜ足並みそろわなかった? 「介護福祉士」国家試験改革
介護唯一の国家資格「介護福祉士」試験制度が、本年度大きく変わります。来年1月の試験から、現場で働く人が取得を目指すとき、従来の3年以上の実務経験の条件に加えて、6ヵ月450時間の「実務者研修」修了が必要になり、受験までのハードルが一段階上げられました。 一方で、制度改革のもうひとつの柱であった、無試験で資格取得できる福祉系養成校卒業生に対する受験合格義務化は、2022年度に先送りとなっています。介護福祉士の社会的評価向上を目的に、資質を高める内容が盛り込まれた今改革。どうして、足並みそろえて新制度に移行できなかったのでしょうか。
キャリアアップできる制度へ見直し
最新の統計によると介護職員総数は、介護保険が施行した2000(平成12)年度の55万人から約3倍増加、現在171万人です(同25年度厚生労働省介護サービス施設・事業所調査)。また、前年度には介護福祉士登録者数が140万人を超えましたが、その中で、介護職に従事する人は約4割にとどまっています。 実は国は、介護福祉士が、専門的知識とスキルを備えた現場の中核となる人材と位置づけ、2007(同19)年、「社会福祉士及び介護福祉士法」を改正。資格取得までの新たな道のり整備に着手しました。介護の現場では、ほかにも都道府県が認定するホームヘルパーの資格があり、介護福祉士の位置づけが明確になっていないという問題もあったからです。
大きく様変わりした現場の資格
しかし、新制度導入には、時間がかかりました。介護福祉士への資格一元化が、ようやく始まったのは2013(同25)年度です。ホームヘルパー資格認定を廃止し、代わって、新しい介護のキャリアパスとして、働き手の入り口になる「介護職員初任者研修」(ホームヘルパー2級相当)が用意されました。 初任者研修の次のステップが、本年度の介護福祉士国家試験から、修了が必須となった「実務者研修」です。かつてのホームヘルパー1級に相当しますが、より実用的な介護技術を身につけることを狙いに「痰吸入」などの医療ケアが新たな内容に盛り込まれています。 この新しい体系整備は、「キャリアの積み方が明確になった」と評価する声もあった一方、働きながらの受験のために、実務者研修を受ける時間の確保と費用が負担と受け取られました。 そのため、当初600時間としていた講習時間も450時間に短縮したほか、かつてのホームヘルパーの受講科目を履修扱い出来るように。通信教育の活用や受講費用の支援などを行い、本年度実施にこぎつけたのです。