J1神戸V 数奇な運命で結ばれる吉田監督と天皇杯 変わらない原点とは
「天皇杯・決勝、神戸1-0G大阪」(23日、国立競技場) 神戸がG大阪を1-0で退け、5大会ぶり2度目の頂点に立った。後半19分、FW宮代大聖(24)が均衡を破った。優勝クラブには1億5千万円が与えられる。2連覇が懸かるJ1は残り2試合で首位に立ち、2冠の可能性がある。G大阪は9大会ぶり6度目(前身の松下電器時代を含む)の制覇はならなかった。関西勢による決勝は1953年度の全関学-大阪クラブ以来で71大会ぶり。93年のJリーグ開幕後では初めてだった。 ◇ ◇ 緊張感から解放されたのか、吉田孝行監督はいつになく甲高い声でインタビューに応じ「最高です!」と2度繰り返した。 指揮官は天皇杯と数奇な運命で結ばれている。選手時代、横浜Fの選手として98年度の78回大会決勝に出場。クラブは経営母体の財政難により、大会後に消滅が決まっていた。トーナメントで負ければチームも終わりという状況下、決勝で清水に2-1で勝利。決勝ゴールを決めたのが吉田監督だった。 「年齢的にも若く、チーム状況も消滅とか難しさもある中で、目の前の試合を全部勝つ気持ちでやっていた」。プロ3年目。経営の波に揺れるクラブで、必死にボールを蹴るしかなかった。「負けたら解散。常にそのプレッシャーと闘い、一日でもみんなと長くやろうという思いだった」。 選手から監督へと立場を変えて挑んだ今大会は「あの当時の感覚とは全然違う」という。しかし「目の前の試合を勝つだけ」という原点は変わらない。リーグ戦とルヴァン杯、ACLEを含めた過密日程を抱え、選手の疲労を減らすため手を尽くした。9月25日の準々決勝・鹿島戦は直近のリーグ戦から先発11人を入れ替えて3-0の勝利。夏に復帰したMF森岡が先制点を挙げるなど、選手も抜てきに応えた。 98年度の決勝で吉田のゴールをアシストした永井秀樹は現在、神戸のスポーツダイレクター(SD)としてクラブを支える。神戸も03年に経営難に直面し、三木谷浩史会長に救われた経緯がある。歴史はつながるが、今は常勝軍団に生まれ変わる局面にいる。「クラブとしてタイトルを取り続けなきゃいけないし、監督としてもタイトルの取れる監督を目指している。向上心を持っていきたい」と吉田監督は力を込めた。