フィリピンの回教徒、パラワン島に見たイスラム共同体
(2024.3.13~5.1 50日間 総費用23万8000円〈航空券含む〉) フィリピンというと、いまだに日本人の間には、銃による殺人が横行する治安の悪い国、そして爆弾テロや身代金目当ての誘拐を繰り返す、イスラム教過激組織が跳梁跋扈している危ない国というイメージが残っているようだ。「フィリピンを50日間もほっつき歩いて危なくなかった?」としばしば友人知人に聞かれる。 バスケットボール・コートにカラフルなテントが並ぶ被災者避難所 しかし西側諸国では、強権独裁で悪名高いドゥテルテ前大統領のお陰で治安は飛躍的に改善したとフィリピン人は実感している。イスラム教徒独立運動についても多数派のモロ民族戦線(MNLF)、モロ・イスラム解放戦線(MILF)と合意に達してドゥテルテ政権下の2019年に暫定自治政府が発足した。 他方であくまでフィリピンからの独立を標榜するイスラム過激派は、依然としてミンダナオ島南西部の山間部やボルネオ島に近いバシラン州、スールー州を拠点に武装闘争を継続している。イスラム国(IS)と結んでいるアブ・サヤフ(AS)の他、ダウラ・イスラシア(DI)、パンサモロ自由戦士(BIFF)などだ。 フィリピンは人口1億2000万人弱。人口の93%がキリスト教で大半がカトリックである。イスラム教は5%に過ぎず、しかも大半はフィリピン南部のミンダナオ島以南に居住している。従ってフツウのフィリピン人にとりイスラム過激派はまったくの嫌われ者である。誰に聞いても政府軍による壊滅作戦を支持している。 それではフツウに暮らしているイスラム教徒の生活はどのようなものか興味を抱いた。
公立小学校のイスラム教徒児童
4月17日。プエルト・プリンセサの大聖堂を見学してから海岸を散策しようと、小路を南へ十分ほど歩くと、小学校があった。保護者らしい女性たちが子どもの出迎えのため日陰に集まりおしゃべりしていた。 大きな公立小学校で保護者に聞くと生徒数3000人。フィリピンの小学校は幼稚園を併設しているケースが多い。ちなみにフィリピンでは幼稚園1年、小学校6年、高校6年が義務教育である。大人数になると教室や教員が足りないので、フィリピンの公立学校では通常午前の部と午後の部の2部制にして授業する。この小学校では校舎を増築して一部制の授業を維持していた。 通りに面した新しい校舎は地元の金融機関の基金と有志の寄付で建設資金を賄ったとのこと。校舎の周囲の柵には有志の芳名が記されていた。 イスラム教徒のスカーフ(=ヒジャブ)を被っている保護者が何人かいた。この付近ではイスラム教徒の住民が多く生徒の約3割がイスラム教徒という。そのためこの小学校では公立学校の正規科目に加えイスラム教徒の生徒にはアラビア語、コーランの授業が組まれているという。 アラビア語は週1時間、コーラン等のイスラム教学は道徳の時間にキリスト教徒児童と分けて授業しているという。その他はフィリピン教育省の規定に従ったカリキュラムである。子どもの将来を考えたバランスが取れたカリキュラムに思えた。