株・不動産価格上昇でよみがえる「平成バブル」のツラすぎる思い出だが…もしもあのとき、銀行が「正しく行動」したらどうなった?【経済学評論家が解説】
あのとき、もし銀行が「正しく」行動していたなら
政府日銀が動けなかったとしても、もっと早くバブルを潰すことはできなかったのでしょうか。筆者は、銀行が「正しく」行動していればバブルは拡大しなかったのではないか、と考えています。 投資家たちは、いまがバブルか否かわからない状況では、「いまがバブルでなければ、買うべきだ。いまがバブルだとしても、崩壊する前に売り抜ければよいのだから、買ってみよう」と考えます。儲かるチャンスに賭けることには、合理性があるわけです。 しかし、銀行は違います。「土地を買うから金を貸してほしい」といわれたとき、銀行は慎重に考えるべきだったのです。「いまがバブルでなければ土地は上がり続けるかもしれない。しかし、その場合に儲かるのは借り手であって、銀行ではない。銀行には金利が入るだけだ」「もしもいまがバブルで、地価が暴落して借り手が倒産すれば、銀行が失うのは金利ではなく元本だ」と考えればよかったのです。これは「儲かれば借り手の勝ち、損すれば借り手と銀行の損」という賭けなのですから、貸すべきではなかったのです。 当時の銀行は、高度成長期の名残りで銀行間の量の競争が激しかったので、冷静に「貸さない」という判断をすることが難しかったのかもしれませんが、次にバブルが疑われる状況になったときには、慎重に判断してほしいものです。それにより、銀行自身を救うのみならず、バブルを抑制することで日本経済も救うことになるのですから。
投資家自身がバブルに踊らないための心得、4つ
以下、投資家自身がバブルに踊らないための筆者なりの心得を記しておきましょう。それは、以下の4条件が揃ったら、慎重になるほうがいいかもしれない、ということです。 (1)バブルだと考える人に「今回だけは以前とは事情が違うから、従来の物差しで判断すべきではない」と反論する人が出てくる → 平成バブル時は「日本経済は世界一になったのだから…」といわれたものです。 (2)地価や株価が高騰しているのに金融が緩和されたまま → バブル期は急激な円高で輸入物価が下落しており、好況でもインフレにならなかったので金融が緩和されたままでした。 (3)いままで株に興味のなかった人々が大量に参入してくる → 読者の知人が「私の友達が株で儲けたらしい。株で儲けるのは簡単なようだから、自分も買ってみよう」などといいだしたら、読者は持っている株を全部売りましょう(笑)。 (4)当事者は盛り上がっているが、部外者は冷静 → バブルの頃、海外では日本の地価や株価が異常だと考えていた人が多かったようです。当事者だけが盛り上がっていたのですね。 現在の状況を上記4条件に当てはめて考えてみると、未だバブルだとはいえないようだ、と筆者は考えています。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義