〝テロ助長〟FBIの警告に答える「今すぐ考え、行動を」 「HOW TO BLOW UP」ダニエル・ゴールドハーバー監督
FBI(米連邦捜査局)が「テロを助長する」と警告を発したという問題作「HOW TO BLOW UP」。地球温暖化が進み、気候変動の脅威が差し迫る中で、米テキサス州の石油精製工場を手製の爆弾で破壊しようとする若者たちを描いたエコスリラーだ。環境問題の緊急性を考慮し構想から19カ月で完成。プロデュース、脚本も兼ねたダニエル・ゴールドハーバー監督は「考えるきっかけになることを望んでいる」と語った。 【動画】あなたはどうする? 映画が問いかける気候変動へのアクション 「HOW TO BLOW UP」予告編
石油パイプラインを爆破する8人のZ世代環境活動家
環境破壊によって人生を狂わされたZ世代の環境活動家たちが、石油パイプラインを破壊する大胆な計画を立てる。石油精製所近くの有害物質汚染地域で異常な熱波のために母親を亡くしたソチ、掘削業者に居留地を侵略されたネーティブアメリカンで、独学で爆弾を作るマイケル、パイプライン建設のため政府から土地を奪われたドウェイン、工場による大気と水の汚染が原因で急性骨髄性白血病を患ったテオら8人は、グループチャットで連絡を取り合い、テキサス州西部の人里離れた納屋に集まった。誰も傷つけず、環境も汚染することのない石油パイプライン爆破計画を実行に移す。 環境問題を扱った作品は数多くある。しかしドキュメンタリーでは「映画の媒体としての力をすべて使い切れていない」と考えた。ドキュメンタリーだと、事実を検証し未来を予測して早急な対応を促すのがよくあるパターン。「幅広い観客に届けるにはどうしたらいいか考えた。彼らのような行動はまだ起きていないが、気候変動へのアクションはいろいろなレベルである。ただ、ターゲットをここまではっきりさせたものはない」と話す。
原作を脚色 リアルで今日的に
ゴールドハーバー監督は例をあげて説明する。「メディアが我々に語る報道やストーリーは抽象的だ。この映画ははっきりとした概念、アイデアとして見せる。人物もリアルだし、動機も共感できるエンタメとして、見ている側は自然に、彼らの行動に刺激を受けながら考えることになる」 さまざまなバックグラウンドを持ったキャラクターによって、なぜこんなことをするかが分かってくる展開。「チームで集まって大掛かりな何かをするジャンルの映画。動機も含め、知り合いのアクティビストの体験や、自分が聞いた話が基になっている」。ただ、原作はある。スウェーデンの気候変動学者アンドレアス・マルムの著書「パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか」を大胆に脚色し、「異なる動機を持った多様性のあるグループを登場させた」と話した。