激安EC「Temu」テレビやYouTubeで“いつのまにか広告が増えている”ナゾ。日本でも幅広い世代が利用する。
データ分析を手掛けるヴァリューズによると一連のテレビCMが始まる前の2024年2月の利用者数は1270万人(推計値、月に1度以上利用した人を1と数える)だったが、6月には1960万人まで増えた。 Temuはサービス開始時から、赤字をいとわず巨額のマーケティング費用を投入している。1億人がテレビ観戦するともいわれるアメリカンフットボールのスーパーボウルの中継で、2023年、2024年と2年連続で広告を出稿したことでも話題になった。2023年にアメリカでのマーケティングに投じた費用は約30億ドル(約4300億円)とも言われる。
一方で昨年秋からアメリカでの伸び悩みが報じられるようになった。SHEIN、アリババ系「アリエクスプレス」、TikTok Shopの中国勢に加え、Amazon、ウォルマートといったアメリカ本土の企業との競争も激しい。 加えて中国発ECがアメリカに商品を発送するにあたって恩恵を受けてきた、価格が800ドル(約11万円)以下の貨物を関税なしでアメリカに輸入できる「デミニミスルール」についても、見直しの議論が進んでいる。
■アメリカから日韓にシフト? 中国からのEC貨物を規制する動きは他国でも広がりつつあり、こうした状況を踏まえ、中国では「Temuがマーケティングの重心をアメリカから日韓にシフトしている」と何度か報じられている。 Temuの広報責任者は日本が「質の高い製品とサービスを重視する洗練された消費者を抱える大きな市場」だと強調し、広告を増やしていることは否定しなかったが「アメリカからシフトしたという報道は誤解」と述べた。「日本の消費者の期待に応えることで、他地域でのサービス向上につながる」とも語った。
ただ、日本市場でも伸び悩みの兆候が見られる。ヴァリューズは「Temuの利用者数は2024年6月をピークに、現在は踊り場にある」と指摘する。 YouTubeやCMで興味を持って、クーポンに惹かれて一度は利用したものの、継続利用につながっていない可能性がある。冒頭で紹介した50代女性は、頻繁な通知に急かされるように数度買い物をした後、利用をやめた。 「たまにいいのもあるけど、粗悪品も多くてもう2度と買わないと思う」
■Temuは危険とプチ炎上も 韓国で売られている商品から発がん性物質が検出されたというニュースも、消費者の不安を高めており、TemuのテレビCMが放映されるたびに、SNSで「怪しい中国アプリ」「Temuは危険」とプチ炎上が起きる。 Temuはこういった批判をどう受け止めているのか。筆者がTemuに取材を申し込んだところ、回答を得ることができたので、その全文を後編で紹介する。 後編はこちら:「激安EC「Temu」が答えた! "利用者が抱くギモン」
浦上 早苗 :経済ジャーナリスト