トランプ氏とのたった5分の電話会談で石破政権に漂う不安
5分という異例の短さが波紋を呼んでいる。 11月7日の石破茂総理からトランプ氏への電話会談だ。トランプ氏は大統領選の勝利の直後から早速各国首脳からの祝意を受けて電話会談を行った。フランスのマクロン大統領とは25分、韓国の尹大統領とは12分。8年前の安倍総理(当時)とは20分だった。 その後、メディアから批判を受けて関係者は取り繕う説明に懸命だ。 「当時、トランプ氏は別荘マール・ア・ラーゴで大統領選の祝勝パーティーの最中。途中抜けだして電話会談を受けたので、5分は仕方ない」。そう説明しているそうだが、日本側が無理やりトランプ氏側に頼み込んだのが透けて見える。韓国の尹大統領がその1時間半前に電話会談を12分間行っている。メンツなどどうでもいいことだが、外交当局にとってはそうはいかなかったのだろう。 問題は時間の長短よりも、中身の有無とその背景だ。 日韓を比較してみよう。トランプ氏は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記と直接対話しかねない。そこで韓国・尹大統領はトランプ氏に対して、最近の朝鮮半島の状況や北朝鮮の弾道ミサイルによる挑発、核開発の動向を具体的に話したという。トランプ氏の方からは韓国の造船業による米国軍艦の補修・整備への協力を求めて、「今後具体的に話したい」としたと報じられている。 一方、石破総理の場合はどうか。残念ながら「日米同盟をより高い次元・段階に引き上げたい」という抽象論だけだ。通訳を介してのやり取りで5分だとそうなるだろう。 こうした差はなぜ生まれたのか。電話会談に当たっては、直前に陣営関係者がトランプ氏に会談相手についてブリーフィングする。問題は石破総理についてどう説明しているかだ。陣営関係者からは心配する声も上がっていたそうだ。率直に言って残念ながら石破総理は「白紙ではなくマイナスイメージ」からのスタートだというのだ。 挙げられた理由はいくつかある。米国が賛同しがたい「アジア版NATO」を提唱している点。かつて安倍元総理の政敵であった点。そして何よりも、政権基盤がぜい弱で長期政権が期待できるのか不安な点が大きいという。 何とか電話会談をセットできて安堵したのが推し量られる。たかが電話会談かもしれないが、異例の短さの背景を考えると実は深刻だ。