ロッテ福浦2000本秘話。イチローの言葉と現役続行宣言の縁
相手投手の癖は見ない。データは参考にするが、基本「ストレート狙いで変化球対応」。名将、野村克也氏が「天才型のAパターン」と呼ぶスタイルの打者だ。トップさえしっかりと決まれば、どんなボールにでも対応できる。 それでも理想のヒットは、2000本中「20本あるか、ないか」だとか。「描いた所にボールが来て、描いた通りにタイミングを取って、描いた場所に打つ。一種のゾーンです」。 あの2000本目も変化球に対応した。だが、その究極の一打にカウントできるようなものではなかったという。 「最近はないっすね。そもそも今シーズンに38本のヒットがなぜ打てたかがわからない。2000本目は、みんなが打たせてくれたヒットですから」 追い求める理想は今なお高い、 「基本目標は10割です。ピッチャーが防御率0.00を目指すように全打席でヒットを打ちたい」 でもね。と福浦は続ける。 「年齢を重ねると1本がより重くなってきた。1本を打つのが難しいんです。スタートで出なくなった、ここ4、5年の1打席は特に重たいんです」 福浦は2019年の現役続行を決めた。この世界、いくら本人がやりたいと言っても球団がいらないと言えば、その時点でユニホームを着ることができなくなるが、2軍打撃コーチ兼任の立場でフロントも福浦を来季も戦力と認めた。 「1打席でも多く立って、2001、2002本と1本でも多くヒットを打ちたい。今年も兼任コーチの肩書きがついていたが、途中、自分のことで精一杯で、なかなか選手教えられる状況じゃなくなってしまった。来年は、兼任のウエイトが自分の中では増す。ファームにいる選手を教えて、もっともっと全体を底上げして得点力をアップできるようにチームの力になれたらいい。チームが強くなれば、井口監督を胴上げできる。いろんなバッターを教えて、見る中で、自分自身もステップアップできるんじゃないか。もっと打てるようになるんじゃないかと、いう気持ちもあるんです」 絶えることなき探求心と自らの可能性を信じての現役続行である。 この14日に43歳となった。 同年代の西武の松井が引退し、44歳の中日・岩瀬仁紀もユニホームを脱いだため、来年は福浦が最年長プレーヤーとなる。だが、もう一人、最年長の現役プレーヤーがいた。 「イチローさん、来季もやるんですよね?」 遠くにいる憧れの人は、東京ドームで開催されるアスレチックス戦で、支配下選手登録される予定が組まれている。海を越えていった45歳のイチローの求道心は、福浦の、それに通じるものがある。 「いつまで野球をやる? わからないです。来年で辞めるかもしれないし、再来年…あと10年と続いて、“おいおい!”となったりしてね。でも、ここまでも覚悟だけは持ってやってきた」 その笑顔に温厚な人格が滲み出た。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)