ロッテ福浦2000本秘話。イチローの言葉と現役続行宣言の縁
腰を突き出し、バットの先を投手に向ける独特の打撃フォーム。その構えは、イチローとケン・グリフィーJrを参考にした。 「イチローさんを尊敬しています。映像を見て物真似をさせてもらった。根本的なところから入っているので、まず構えから。どうすれば振りやすいかと」 2つ年上になるイチローとの出会いは衝撃的だった。 1軍に昇格したプロ5年目のシーズン中に神戸に遠征した際、“ジョニー”こと黒木知宏氏の紹介でイチローと一緒に食事する機会に恵まれたのである。イチローが贔屓にしている三宮のたん専門店の「たん平」だった。 「もちろんバッティングの心得を聞きました」 福浦は「バッティングで一番重要なことは何ですか?」と質問した。 イチローの答えはたった一言。 「胸だけだよ」。 深い言葉だった。 「凄く覚えています。胸をピッチャーに早く見せちゃダメだよ、開くなよ、ということ。全然、シンプルなことでも、イチローさんに言われると、それを意識してバッティングは変わるんですよ。あの足の上げ方は真似しようにもできないしタイミングについては聞かなかったんですが、なぜかグリップとかは教えてくれなかった(笑)」 今でも福浦の胸に残っている2000本安打を支えた打撃心得である。 その年からレギュラーに定着、プロ8年目で打率.346で首位打者を獲得、堂々の千葉ロッテの看板打者に成長するが、イチローにインスパイアされた打撃フォームには、今でも、名残がある。しかし、自然体に近い形に落ち着いたのはプロ生活も19年を数える2012年に入った成熟期だったという。 「でも、どんどんできなくなった。自分で作ると無理した姿勢を取るので体に負担がかかり、腰なんかが張るんです。今はナチュラル。自然体になりました」 福浦が試行錯誤の末、たどりついた極意は、「コンパクトに後ろを小さく。そしてスイングはダウン、レベル、アッパーの順」というもの。構えの段階でバットのヘッドが投手側を向いていても、耳の傍をバットが通るほど、コンパクトにボールのヒッティングポイントへ軌道を描けば問題はない。 その球界屈指のバットコントロールと広角打法を生み出している秘訣は「下半身です」という。 下半身をどう使うのか?と突っ込むと「そこまで聞きますか?」と福浦は爆笑した。 「回転は意識せず、股関節の左足付け根あたりに重心を残しながらの移動。股関節がはまってこないと駄目です」 2000本安打の会見で、福浦さんにとってヒットとは?と哲学的な質問をぶつけられたとき、「難しい質問。引退するまでに考えおきます」と答えた。 ではバッティングとは何か? 福浦は即答した。 「タイミングですかね。そしてバットのトップ。いかにトップに入るか。トップに入って打ちにいくと対応ができます。僕はボールを呼び込んで打つタイプではないので。それが間になって詰まっても三遊間やレフト前へ落とすことできます。それが持ち味です。でも難しい」 バットのトップとは、テイクバックの際のバットのヘッドの位置のことで、下半身を含めた体が弓のように張った際にバットのヘッドがどこにあるのかが、タイミングを取る上で重要な要素になる。